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アビスパ福岡OB神山竜一と鈴木惇、独占インタビュー【前編】

鈴木惇(アビスパ福岡所属時)写真:Getty Images

J1とJ2の違いと来季の注目選手

2001年に初めてJ2降格を経験し、それ以降2021年にJ1残留を達成するまで、実に20年にわたって5年に1度昇格し翌年降格という経験を繰り返してきた福岡。「5年周期」と呼ばれた不名誉なルーティンを脱するため懸命にもがいた2人は、J1とJ2の差を身をもって知っている。

鈴木「よく聞かれるんですけど、全部のレベルが違うから1つや2つで言うのは相当難しい。でもあえて1つ言うなら、ゴール前のクオリティ、特に決め切るストライカーの選手がいるかどうかという差は1番あるかなと思います」

神山「やっぱりフィニッシュの精度は違います。J1のチームは決め切る人が1人じゃない。中盤から打つミドルシュートの精度が高い選手もいれば、ペナルティエリアの中でしっかり仕事ができる選手も多い。惇が言ったようにエースストライカーの質もそうだし、ゲームを組み立てる選手でさえシンプルにゴールに向いてくる。しかも凄く精度の高いミドルシュート、ロングシュートが飛んでくるんです。僕はキーパーをやっていたので、そういったところはJ1とJ2の差が凄くあると体感していました」

では、なぜ2021年はJ1残留を達成できたのか。鈴木は3度の昇格経験のなかで、翌年降格した2010年と2015年、翌年残留できた2020年をどちらも経験している。しかし実際に渦中にいた選手でさえ、両ケースの違いは明確でないという。

鈴木「(違いは)分からないですね。多分、分かっていないからクビになったと思うんですけど。昇格を3回経験しましたが、理由が分からない勢いは3回ともありました。かといって(昇格した)3シーズンの中で取り組みに差があったかと考えても、自分の中で分からない。勢いや一体感は共通していて、あとは選手の違い。昇格する時は『これはいけそうだな』という雰囲気は感じるんですけど、でもその雰囲気を作ろうとしても全部はコントロールできません。アディショナルタイムで勝ち越して勝ち点3を取るような、コントロールできることを超えたものが何個か出てこないといけないと感じています」

となると、違いは選手もしくは監督ということになる。鈴木は2020シーズン、現在も指揮を執る長谷部監督から指導を受けたため特徴を理解している。

鈴木「やってほしいプレーとやってほしくないプレーが、はっきりしています。あとは、指示が具体的です。監督によっては横文字を使ったりして、捉え方が人によって違ってしまうことがあるんですけど、シゲさん(長谷部監督)が言ったことはみんな共通して理解できているんじゃないかなという印象があります。ただ、自分としては要求に応えられず、さらに自分の色も出せなかったので悔しさが残っています」

やってほしいプレーとやってほしくないプレーがはっきりしている。これは長谷部監督を表す言葉として、とても腑に落ちた。現在の福岡は、選手に迷いがまるでない。全員が自信を持ち、常にベストを尽くせる理由なのだろう。

神山竜一(アビスパ福岡所属時)写真:Getty Images

福岡のこれから

タイトルを獲ったことで、来季福岡に向けられる目は厳しくなる。2人の注目選手を問うと、それを打破することが期待できる選手と自身に縁のある選手の名が挙がった。

鈴木「やっぱり、城後さんが現役を続けるのであれば(12月27日に契約更新発表)、試合に出て点を取るところをまた見たいですね。金森も決勝の最後のピッチには立っていましたけど、スタメンではなかった。その悔しさを良いほうに持っていけるタイプの性格だと思いますし、ベテランと呼ばれる年齢にもなるので結果を出してほしいです。あとは相手に研究されて結果を出すことが難しくなってくる中で、紺野(和也)選手は違いを出せると思います。左利きでキックが上手い選手は好きですし。チームとして崩すのが難しいときに、彼のような選手の一振りで勝ち切ることが必要になると思うので、攻撃の選手に期待しています」

神山「この前たまたま一緒に食事もした、後輩の鶴野怜樹には期待しています。高校時代から足が速くてハードワークできる選手だったので、あとは得点にこだわってもらって来季は飛躍の年にしてもらえたら。城後と一緒のポジションですし、長くアビスパに在籍して城後が積み上げたものを引き継いでもらえたらなと思います。彼自身がもっと上に行くためにいろいろあるかもしれませんが、アビスパにいる間はそういうものを目指してやってもらえたらいいですね。あと僕はGKだったので、ルヴァン杯決勝で得点を挙げた宮(大樹)選手やGKなど、守備寄りの選手に期待しています」

福岡にとって悲願の初戴冠は、クラブ創設から28年目のものだった。単純な期間を考えると長い年数だが、現場に身を置いた人間には異なる感覚がある。

神山「いずれは(タイトルを)取れると思っていましたけど、こんなに早いとは。現役の時にアビスパに16年いるなかで、J2の優勝でさえ難しいと分かっていたので。それをJ1で、ルヴァン杯でタイトルを獲るのは本当に難しいことなので、今年達成できたアビスパは凄いなと思います」


プロとして福岡に所属していた期間は、2人あわせて27年。鈴木が下部組織に所属していた期間を加えると、優に30年を超える。そんな2人をはじめ、これまですべての監督や選手が懸命に努力を続けても達成できなかったタイトル獲得。そう考えると、より大きな事を成し遂げたと思えてくる。2023シーズンはは、表立って見える人たちだけでなく、多くの見えない人々の感情をも動かしたシーズンだった。

後日公開される続編では、2人が福岡所属時の思い出を中心に語っている。

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名前椎葉 洋平
趣味:サッカー観戦、読書、音楽鑑賞
好きなチーム:アビスパ福岡、Jリーグ全般、日本のサッカークラブ全般

福岡の地から日本サッカー界を少しでも盛り上げられるよう、真摯に精一杯頑張ります。

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