Jリーグ アビスパ福岡

アビスパ福岡OB神山竜一と鈴木惇、独占インタビュー【前編】

神山竜一(左)鈴木惇(右)写真:Getty Images

クラブ史上最高の時を過ごした2023シーズンのアビスパ福岡。長谷部茂利監督をはじめとするスタッフ陣や選手、クラブに関わるすべての人たちが勝ち取ったYBCルヴァンカップ(ルヴァン杯)優勝のほか、福岡の長い歴史の中で最高順位(J1リーグ7位)となる成績を残した1年だった。

この快挙は、今までクラブに関わり歴史を紡いでくれた人たちのおかげでもある。そこで、アビスパ福岡のレジェンド、神山竜一氏とMF鈴木惇選手(FKスードゥヴァ)にインタビューを行った。前編では、主にルヴァン杯決勝と来季の福岡について訊いた。(※記事内、敬称略)


インタビュー中の神山竜一と鈴木惇

それぞれの目から見たルヴァン杯決勝

Jクラブではアビスパ福岡一筋16年。J1とJ2の計242試合でゴールマウスを守った神山竜一は、母校である島根県の立正大学淞南高等学校で現役サッカー部員たちと一緒に福岡がタイトルを獲得する歴史的瞬間を観ていた。決勝戦の福岡ベンチには、神山にとっては後輩、部員たちにとっては先輩にあたるFW鶴野怜樹の姿があった。出場こそ叶わなかったものの、その存在は後輩たちに希望と勇気を与えるものだった。

神山「決勝の舞台に先輩がいることは在校生の刺激となり、また先生たちも元気をもらっているようでした。僕の現役の時もそうですけど、試合に出たり活躍したりすることでお世話になった人たちに恩返しできる。良いことですよね」

一方の鈴木惇は、国立で懸命に戦う選手たちを海外向けのJリーグ公式YouTubeチャンネルを通して見つめていた。小学生時代から福岡の下部組織で育ち、高校3年生でトップチームに2種登録され、正式加入した2008シーズン以降計11年(2008-2012、2015-2020)を福岡で過ごした鈴木。現在は日本から時差7時間のリトアニアで、強豪クラブFKスードゥヴァに所属している。

ルヴァン杯決勝では、開始5分に福岡のMF前寛之が先制点を挙げると、44分にもDF宮大樹が追加点を奪取。前半を2-0と理想的な形で折り返した。

神山「アビスパのペースで進んでいる試合だと感じていて、理想の形で先制点を取れましたよね」

鈴木「展開的に福岡が勝ちそうだなと思いながら観ていました。ピンチもありましたけど、これは優勝しそうだな、と」

後半も福岡ペースが続いたものの、59分に追加点の懸かったPKを止められると流れが一変。67分に1点を返されたあとは押し込まれ続け、危険な時間が続いた。

神山「PKを外した時にちょっと危ないなと思いました。2-0で勝っていてPKを止められて1点を取られると、(試合を)やっているほうからするとちょっとヤバいなと感じます。でも、それでも守り切れるところにアビスパの守備の強さを感じました」


アビスパ福岡 FW城後寿 写真:Getty Images

悔しさとともに湧きあがった喜び

最終的にポストも味方につけ、2-1で逃げ切った福岡。試合終了を告げるホイッスルの瞬間、2人の胸にあったのは悔しさで、嬉しさはその後やってきたという。

鈴木「(福岡を)離れてもう3年ぐらい経っていたので、試合中はそんなに特別な思いはなかったんですけど、優勝が決まった瞬間は率直に悔しいという気持ちにもなりました。自分が在籍している時にタイトルを取りたいと思っていたので。アビスパの初タイトルに関わるという可能性がなくなったことに、悔しさがありました。

でも、城後さんがカップを掲げているところや(金森)健志が優勝の瞬間にピッチに立っていた姿。あとはサポーターが嬉し泣きしているのを見て、その時に『ああ、良かったな』と思いました。僕は(J1に)昇格した2020 年限りで退団したんですけど、コロナ渦真っ只中だったのでサポーターのリアクションを見れないままでした。また、その前のシーズン(2019年)はキャプテンをやっていたんですけど、J2で残留争いをしていて、サポーターが喜んでいる姿をなかなか見れないままだったんです」

神山「僕は素直に嬉しかったですし、でも自分が在籍している時にタイトルを1つでも取れたらという思いは持っていたので、惇も言ったようにちょっと悔しさもありました。けれど、やっぱり城後がトロフィーを掲げたことはアビスパにとって凄く良いことだし、城後とプレーして自分たちのようにアビスパを辞めた選手は皆、そう感じているんじゃないかなと思います」

FW城後寿はルヴァン杯決勝ではベンチ外だったものの、試合後には選手たちの提案によりサポーターの前で胴上げされた。来季20年目のシーズンを迎えるバンディエラは、サポーターにとってもそうであるように、共に戦った選手にとっても特別な存在だ。

神山「アビスパのためにずっとやってきた選手だと思います。細かくズバズバ言うタイプではないけれど、練習の姿勢とか、そういうところで後輩に語りかける。走る練習やオフの期間なども含めて、誰よりも練習していると思いますよ。それを見ている選手は尊敬しているでしょうし、僕にとっては後輩ですけど尊敬しかないですね。コミュニケーションが上手い選手かと言ったら口下手なのでそうでもないけど(笑)でもやっぱり言うべきときは言いますし、先輩後輩関係なくコミュニケーションを取ってくれる。(ルヴァン杯の)決勝戦には出られなかったですけど、だから城後がトロフィーを掲げた時はグッときましたね」

鈴木にとっても、城後は3度の昇格と2度の降格をともに味わった戦友。特別な存在だ。

鈴木「多分(城後に)めちゃくちゃたくさんのアシストはしてないんですけど、いつも信頼して動いてくれていました。身体能力が高いので、少々ピンポイントじゃなくても合わせてくれる。その身体能力をまだ維持しているので、努力の賜物だな、凄いなと思いながら見ています」

Previous
ページ 1 / 2

名前椎葉 洋平
趣味:サッカー観戦、読書、音楽鑑賞
好きなチーム:アビスパ福岡、Jリーグ全般、日本のサッカークラブ全般

福岡の地から日本サッカー界を少しでも盛り上げられるよう、真摯に精一杯頑張ります。

筆者記事一覧