篠田監督も気にしていた試合序盤
甲府の篠田監督は試合後に行われた会見で、「相手のストロングポイントを抑えることが、(試合の)立ち上がりはうまくできませんでした」と率直に語っている。これに加え質疑応答のなかで、浙江のMFアンドリヤシェビッチの対応に苦労したことも明かしてくれた。
ー相手のストロングポイントを、試合の立ち上がりに抑えられなかったというお話がありましたが、そのなかでも先制点を奪い、前半は自分たち(甲府)のペースで試合を進めることができていたと思います。この一番の要因は何だったと、監督はお考えですか。
「相手の11番の選手(アンドリヤシェビッチ)が、うちのMF林田滉也(甲府のボランチ)の裏に立ったり、サイドにボールが出たら、縦に3人相手選手が並ぶ形を、試合の立ち上がりにうまく作られました(アンドリヤシェビッチ、相手サイドハーフ、サイドバックの計3人)。そこにボールを供給されることが何度かありましたが、徐々にそのスペースを埋めました。あとは飯島とウタカの2トップによる、ボール保持者への制限(ボール保持者への寄せ)がうまくできたことで、相手の攻撃に対する自分たちの守備がうまくいった。そこがひとつ前半のポイントだったと思います」
試合序盤にハイプレスを掻い潜られ、やむなく自陣へ撤退する場面もあったが、基本的には敵陣でボールを奪おうとする姿勢を示し続けた甲府。最終ラインも試合全体を通じて高めに設定されていたが、背後のスペースのケアは行き届いていた。
最前線と中盤の距離が開いてしまうことで、プレスの連動性が低くなる場面が試合序盤に見受けられたが、時間の経過とともにこの問題も解決。前半アディショナルタイムに生まれた甲府の2点目も、元を辿ればウタカと飯島が相手のパスワークを右サイド(浙江にとっての自陣左サイド)へ追いやったことから生まれたものである。相手の左サイドバック、グー・ビンが繰り出した強引な縦パスを甲府の右サイドバック関口が回収。これが最終的に宮崎のクロスやジェトゥリオのゴールに繋がった。
浙江のハイプレスを破った甲府
甲府は前半9分に浙江のハイプレスを浴び、パス回しを自陣右サイドへ追いやられたが、ここでボールを受けたDF井上詩音(センターバック)が最前線のウタカへ正確なロングパスを供給。屈強なポストプレーを披露したウタカのパスが僅かにずれ、一度浙江にボールを奪われかけたものの、MF中村が奪還してロングカウンターに繋げた。
同じく甲府が浙江のハイプレスに晒され、自陣右サイドに釘付けにされた前半11分には、ボランチの林田からウタカに正確なロングパスが送られている。ここでもウタカのポストプレーが冴え渡り、同選手のパスを受けた宮崎のドリブルから縦に速い攻撃が始まった。
ハイプレスを浴びたら、まずは最前線のウタカへのパスを試みる。この日の甲府の戦いぶりからはこの原則が窺え、これが強力な打開策になっていた。ウタカの得点力やボール保持力に救われた感もあるが、甲府の選手たちの相手の出方を見抜く力、戦況判断力の高さが窺えた一戦だった。
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