Jリーグ

物を言った川崎Fの緻密なプレス。福岡に足りなかった工夫は【天皇杯準決勝】

アビスパ福岡 DF奈良竜樹 写真:Getty Images

福岡の課題は配球のバリエーション

最前線の山岸のポストプレーは相変わらず安定していたものの、3バックからの効果的な配球が少なく、ゆえに攻撃に変化を加えられなかった福岡。川崎Fの3トップに警戒されていたとはいえ、3バックからチャンスメイクできそうな場面はあった。

前半15分の福岡の攻撃シーンが、その典型例。この場面ではDF奈良竜樹(センターバック)が自陣でボールを保持すると同時に、ハーフウェイライン近辺に立っていた小田(左ウイングバック)がフリーだったが、奈良はここへ配球せず。奈良からMF井手口陽介にショートパスが送られたものの、これが川崎Fのハイプレスのスイッチとなった。

福岡の3バックが川崎Fのハイプレスを浴びたことで、小田はやむを得ず帰陣。自陣で宮からの横パスを受けた小田自身も、川崎FのDF山根視来(右サイドバック)のプレスに晒されている。小田のロングパスを山岸と金森が繋いだことで事なきを得たが、川崎Fにボールを回収され、速攻を浴びるリスクもはらんでいた。

前半15分以外にも、小田がハーフウェイライン近辺且つ対面の山根に捕捉されにくい立ち位置をとれている場面があったため、ここへ素早く配球できていれば川崎Fを困らせることができたかもしれない。3バックからの配球ルートの拡大は、福岡が今後突き詰めるべき課題だろう。


アビスパ福岡 長谷部茂利監督 写真:Getty Images

長谷部監督が明かした複雑な心境

福岡の長谷部監督は試合後の会見(質疑応答)で、自軍の攻撃を振り返り。理想の形を体現しきれなかった旨を、率直に語った。

ー同点ゴールの場面では、高い位置から連動してプレスをかける福岡の良さと、これまで積み上げてきたポケット(ペナルティエリア内の両脇のエリア)に侵入して崩すという形が見られました。川崎Fという強い相手に、良い守備からの良い攻撃ができたと思いますが、(長谷部監督は)どのように考えていらっしゃいますか。

「良い形だったと思いますが、(試合全体を通じて)回数が少ない。前半から自分たちでボールを動かして、あそこのスペースを取りにいくことが、もう少しできたんじゃないかなという残念な気持ちがあります。(同点ゴールは)川崎さんの守備が、そこまで上手くいっていないんじゃないかという算段のなかのプレーだったので、手放しでは喜べない。自分のなかでは複雑な心境ですね」

先述した通り、3バックからの配球ルートを拡大できれば、自分たちでボールを動かすサッカーをより高いレベルで体現できるだろう。着実にチームをレベルアップさせている52歳の指揮官が、今月11日と15日に行われるルヴァン杯準決勝(名古屋グランパス戦)に向けてこの点をブラッシュアップできるかに注目したい。

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名前:今﨑新也
趣味:ピッツェリア巡り(ピッツァ・ナポレターナ大好き)
好きなチーム:イタリア代表
2015年に『サッカーキング』主催のフリーペーパー制作企画(短期講座)を受講。2016年10月以降はニュースサイト『theWORLD』での記事執筆、Jリーグの現地取材など、サッカーライターや編集者として実績を積む。少年時代に憧れた選手は、ドラガン・ストイコビッチと中田英寿。

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