日本サッカー協会(JFA)審判委員会は9月27日、東京都文京区のJFAハウスにてレフェリーブリーフィングを開催。9月24日に行われた明治安田生命J1リーグ第28節、ガンバ大阪対浦和レッズの一戦で、FWホセ・カンテ(浦和)の退場処分に繋がった集団的対立について説明した。
後半4分、浦和GK西川周作のゴールキックでプレーが再開され、ボールはG大阪が守るペナルティエリア付近へ。この直後のボールの奪い合いで、カンテがG大阪のDF黒川圭介のユニフォームを引っ張り転倒させる。荒木友輔主審がすぐさま笛を吹き、カンテのホールディングの反則をとった。
G大阪のフリーキックでプレー再開と思われたが、転倒させられたことに腹を立てた黒川がカンテを小突く。G大阪のFW宇佐美貴史もカンテに詰め寄り、これらをきっかけに両チームの選手たちによる対立が起きた。
この騒動のなか、カンテが宇佐美に頭突きを見舞ったことで、ビデオアシスタントレフェリー(VAR)が介入。荒木主審によるオンフィールドレビュー(※)の結果、集団的対立のきっかけを作った黒川と宇佐美にイエローカード、頭突きに及んだカンテにはレッドカードが提示された。
※VARの提案をもとに、主審が自らリプレイ映像を見て最終の判定を下すこと。
「状況が落ち着くまでVARは様子を見る」
JFA審判マネジャーJリーグ担当統括の東城穣氏は、当該場面でVARがチェックしていた映像と、審判団による無線でのやり取り(音声)を報道陣に公開。そのうえで、集団的対立が起きた際のVAR介入の手順を説明している。
「こうした状況では、色々なことが起きます。(事が)大きくなるかもしれないので、状況(集団的対立)が落ち着くまでVARは様子を見るようにしています。(様子を見ずに)VARがすぐ映像チェックに入って、誰にレッドカードなのか、他に何か起きていないかを見にいってしまうと、(判定に)余計に時間がかかってしまうので」
また、東城氏は集団的対立時に主審がとるべき行動についても言及。対立の制止よりも、状況把握を優先するというのが鉄則のようだ。
「騒動の輪の中へ主審が入ってしまうと、巻き込まれて(全体の状況が)分からなくなる可能性があります。(対立が起きている場所から)距離をとって、副審とも(協力して)違う角度からそれぞれ監視するということになっています」
JFA審判委員会委員長の扇谷健司氏も、主審が集団的対立を制止しに行くことの危険性を指摘。「1対1の対立ならまだしも、(騒動に関わる)選手の人数が多くなったときにリスクがあるかと。(主審が)足を踏まれたり、背後で何かが起きて、(選手と)ぶつかってしまったりすることもあるんです」と補足している。
まずは騒動が収まるのを待ちつつ、全体の状況を把握する。これが審判員の間で徹底されている、集団的対立発生時の原則だ。
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