ラツィオのパス回し停滞の原因は
ユベントスの守備の練度が高かったのは確かだが、その一方でラツィオの攻撃配置の悪さも浮き彫りに。特に芳しくなかったのが、ラツィオが自陣後方からパス回しを試みた際の、ヒサイとマルシッチの両サイドバックの立ち位置だ。
2失点を喫した前半に限っても、ヒサイとマルシッチが自陣後方のタッチライン際や、味方センターバックとほぼ横並びの位置でボールを受けてしまう場面がちらほら。この位置ではサイドバックが味方からのパスをフリーで受けやすいが、自身の傍にタッチラインがある状況となるため、その後のパスコースが180度方向に限られる(タッチラインがある方向にはパスを出せない)。ゆえにサイドバックやその前方にいるサイドハーフ(ウイングFW)が相手のプレスの標的となりやすく、ボールを失う確率が上がるのが問題点だ。
この試合でも、先述の位置でボールを受けたヒサイとマルシッチがユベントスのインサイドハーフによるプレスの餌食となったほか、彼らの前方にいるザッカーニとフェリペ・アンデルソンの両ウイングFWも、ホームチームのウイングバックやセンターバックの徹底マークに遭い、相手ゴールに背を向けた状態でのプレーを余儀なくされている。前半の途中からヒサイとマルシッチがフリーでボールを保持できる場面が増えたが、これは得点を挙げたユベントスが、[5-3-2]の布陣による撤退守備へ移行したため。先述のラツィオのサイドバックの立ち位置が、功を奏したと評するのは早計だろう。
前半2分のラツィオの自陣でのパス回しを見ても、味方センターバックとほぼ横並びの位置、且つタッチライン際でボールを受けたヒサイとマルシッチが、ユベントスのMFミレッティとラビオのプレスを浴びて窮屈なプレーを強いられている。思い返せば、このプレーを境に試合の主導権がユベントスに渡っていた。
GKや最終ラインからパスを回す際に、サイドバックが内側に絞って左右どちらのパスコースも確保するなどの工夫が、ラツィオには必要だろう。
際立ったユベントスの守備のメリハリ
後半に入ってもサイドバックの立ち位置が修正されなかったラツィオに対し、ユベントスは前半同様のハイプレスで試合を掌握。ハイプレス一辺倒ではなく、[5-3-2]の布陣による撤退守備を適宜織り交ぜたことで、選手の体力の消耗が最小限に抑えられた。
後半19分に自陣でのパスを鎌田にカットされ、この直後の速攻からアルベルトにミドルシュートを突き刺されたが、ユベントスはすぐさま反撃。同22分、マッケニーのロングパスを受けたブラホビッチが敵陣ペナルティアーク内からミドルシュートを放ち、勝利を決定づけるゴールを挙げた。
この日のユベントスは、メリハリの利いた守備でラツィオを翻弄。今季のセリエA4試合消化時点で3勝1分けの2位と、好発進をきっている。2019/20シーズンを最後に遠ざかっている、同リーグ王座への返り咲きに向けた準備は整った。
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