Jリーグ

齊藤未月重傷シーンはなぜ見落とされたのか。JFA会見全容【取材】

写真:Getty Images

日本サッカー協会(JFA)審判委員会は8月28日、東京都文京区のJFAハウスにてレフェリーブリーフィングを開催。今月19日に行われた明治安田生命J1リーグ第24節、ヴィッセル神戸対柏レイソルの一戦で、MF齊藤未月(神戸)が重傷を負った場面について見解を発表した。

この試合の前半21分に、神戸が敵陣でフリーキックを獲得する。その後ペナルティエリア内でシュートを打とうとした齊藤が、柏のDFジエゴやMF戸嶋祥郎と交錯。これにより左ひざが大きく折れ曲がり、途中交代を余儀なくされた齊藤は、全治約1年との診断を受けている(左膝関節脱臼、左膝複合靱帯損傷、内外側半月板損傷)。

この場面で今村義朗主審は柏の2選手のファウルをとらず、このノーファウル判定に対するビデオアシスタントレフェリー(VAR)の介入も無し。審判団の一連の措置は物議を醸した。

JFA審判委員会委員長の扇谷健司氏はレフェリーブリーフィングの冒頭で、「サッカーファミリーとして、齊藤選手の怪我は非常に心が痛むものです。1日でも早く復帰されることを願い、お見舞い申し上げたい」と吐露。そのうえで、正しい判定を試合中に下せなかった点について謝罪した。

「あのシーンについて、我々(審判委員会)は議論を重ねました。先に見解をお伝えしますと、(本来であれば)レッドカード。正しいジャッジができなかったことを、本当に申し訳なく思っています」

なお、扇谷氏は本ブリーフィングにおいて、反則者は足を高く上げ、且つそれを齊藤に向けたジエゴであると説明している。


ジエゴ(左)齊藤未月(右)写真:Getty Images

確認できなかった接触の瞬間

本事象の説明に先立ち、扇谷氏は報道陣に対し、当該場面でビデオアシスタントレフェリーがチェックしていた映像(計4画面)と、審判団による無線でのやり取り(音声)を公開。「ドクター、ドクター来て!」「担架、担架!」などの大声を含む、現場の緊迫した状況が記者団に伝えられた。

このうえで扇谷氏は、今村主審をはじめとするレフェリーチームが、ジエゴの反則を確認できなかった原因を説明している。

「ビデオアシスタントレフェリー(VAR)は最初、シュートが放たれた瞬間のハンドの反則(の可能性)を見ていました。そして残念ながら、カメラ(のひとつ)が揺れてしまったんですね。柏が守るゴール裏からの映像も見たのですが、(齊藤とジエゴの)接触の瞬間がゴールポストに隠れて、(接触の有無や部位が)明確には分からなかった。次にVARは、神戸のゴール裏からの映像を見ました。(ジエゴの)足がすごく上がっているのは分かります。こちらの選手(戸嶋)の足も、多分(齊藤の)足の甲あたりに当たっている。ただ、この映像でもどこがどう当たっているのか、VARとしては分からない。最後の映像(メインスタンド側からのもの)も、接触の瞬間に停止するとぶれるんです(映像が不鮮明になる)」

VARが齊藤と柏の2選手の接触を確認できなかった理由を説明したうえで、扇谷氏は本事象に関する見解をまとめている。

「映像がぼやけるかもしれませんけど、接触はある(と認定できる)。神戸のゴール裏からの映像を見る限り、柏の選手(ジエゴ)の足も上がっていて、齊藤選手の足が曲がってしまっているという根拠もある。これら複合的なものを判断してジャッジをしないといけない時があると、我々は考えました。(審判団として)もっとやれることがあったのではないかと思います」

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名前:今﨑新也
趣味:ピッツェリア巡り(ピッツァ・ナポレターナ大好き)
好きなチーム:イタリア代表
2015年に『サッカーキング』主催のフリーペーパー制作企画(短期講座)を受講。2016年10月以降はニュースサイト『theWORLD』での記事執筆、Jリーグの現地取材など、サッカーライターや編集者として実績を積む。少年時代に憧れた選手は、ドラガン・ストイコビッチと中田英寿。

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