日本代表・海外組 プレミアリーグ

なぜリバプールは遠藤航を選んだのか?クラブ状況&データから徹底分析!

MF遠藤航(シュツットガルト所属時)写真:Getty Images

闘志溢れるデュエル王の守備データ

遠藤がブンデスリーガで2シーズン連続(2020/21、2021/22)デュエル王(デュエル:1対1の戦い)を獲得したことは、日本ではとても有名な話だ。ハードワークできる遠藤は、試合を読み、危険を察知し、パスコースを封鎖し、広いエリアをカバーするための知識を持っている。

そんな遠藤の守備についてのデータから振り返りたい。2020/21〜2022/23シーズンにおけるブンデスリーガ所属MF選手中、遠藤の記録が下記となる(Optaより)。

  • デュエル回数:最多(1274回)
  • デュエル勝利数:最多(695回)
  • ディフェンシブサードでのボール奪取回数:最多(254回)
  • クリア回数:最多(175回)
  • ヘディングクリア回数:最多(105回)
  • 空中でのデュエル勝利数:最多(219回)
  • 相手チームからボールを奪い取った回数:2位(706回)
  • ミドルサードで相手チームからボールを奪い取った回数:2位(404回)
  • タックル数:2位(207回)

シュツットガルトのようなブンデスリーガの下位チームでプレーすると、必然的に守備の時間や回数が多くなる。しかし回数ではなく質に注目しても、地上戦のデュエルにおける勝率は54.6%でタックルの勝率が58.5%と、驚異的なスタッツを残している。

また、178cmという身長にもかかわらず、空中戦のデュエルも素晴らしい成績だ。90分あたりに換算すると3.7回から2.2回勝利しており勝率はなんと95%。リーグは違えど、元リバプールのファビーニョ(90分あたり2.7回から1.5回)、ヘンダーソン(90分あたり1.0回から0.6回)、ミルナー(90分あたり3.0回から1.6回)よりも優れた数字だ。一部のリバプールサポーターは、このデュエルに関する数字を見ただけでも、遠藤を魅力的に感じることだろう。


MF遠藤航(シュツットガルト所属時)写真:Getty Images

パス成功率は低くも、攻撃データも抜群

遠藤の良さは守備だけにとどまらない。昨2022/23シーズン、シュツットガルトの攻撃において、チーム最多の129回(シュート35本、チャンスメイク39回、シュートまでのビルドアップ関与55回)に関与し、2位のMFクリス・ヒューリッヒ(102回)を大きく上回った。

さらに、2020/21シーズン以降はシュートに繋がった攻撃(セットプレーなどの特定の状況を除く)の始まりになった回数が90回だった。これは同期間におけるバイエルン・ミュンヘンのMFヨシュア・キミッヒ(118回)に次ぐ2位の記録。このことから、ルーズボールを拾うためのポジション取りと、守備から攻撃にうまく繋ぐ能力があることがわかる。

また、ゴールに直接繋がる攻撃においても素晴らしい。昨シーズンのブンデスリーガにおけるオープンプレーからのチャンスメイク数で、遠藤はリーグ5位の46回を記録。これを上回る選手は、バイエルンのFWジャマル・ムシアラ(53回)、当時バイエル・レバークーゼンのFWムサ・ディアビ(52回)、ドルトムントDFラファエル・ゲレイロ(47回)、そして新たにリバプールに加わった元ライプツィヒのMFソボスライ・ドミニク(47回)だけだった。

一方、昨シーズンのパス成功率は79.7%とお世辞にも高いとは言えない。ただし、その内訳に焦点を当ててみると、遠藤が選択した32.1%のパスが前方に向かうもので、9.7%がロングパス。これはリバプールも狙っていたレアル・マドリードのMFジュード・ベリンガムと似た内容だ。

また自らボールを持ち運び、エネルギーを持ってダイナミックに攻撃する遠藤は、ボールを持ち運んだときのxG(ゴール期待値)がとても高く、危険なエリアにボールを運び、チャンスを創る能力に優れていることもわかっている。

これらの能力やプレーはエネルギー溢れるリバプールの攻撃スタイルにマッチしていると言えよう。


リバプール MF遠藤航 写真:Getty Images

自己管理も完璧

また遠藤にとって初となるプレミアリーグは、スケジュールがタイトだ。特にリバプールは、チームスタイルの影響やリーグ以外の大会に出場することで、毎シーズン怪我人が多く出ている。チームに加入しながらも、怪我で目立った活躍ができないまま退団していった選手は多い。

しかし、遠藤に怪我の心配はなさそうだ。ブンデスリーガにおける過去3シーズンで、わずか3試合(出場停止、コロナウイルス、脳震盪)しか欠場しておらず、MFとして最も長い出場時間(8,783分)の102試合中99試合に出場してきた。

シュツットガルトでは、遠藤は非常に献身的なプロフェッショナルとして知られており、代表戦による長い遠征を終えてトレーニンググラウンドに戻ると、まず始めにジムへ向かうという。自身のケア、タフさにおいては完璧だと思われる。


アル・イテハド MFファビーニョ(リバプール所属時)写真:Getty Images

リバプールのDMFに求められるものは?

それでは最後に、昨2022/23シーズンまでリバプールのDMFを担当していたファビーニョと、遠藤のプレーを比較してみたい。

ボール保持時、遠藤は前方へのプレーを行う。ファビーニョは真逆で、チームメイトへの短いパスでリスクを取らないプレーをしていた。リバプールのDMFはボールを保持している時、チームのコントロールと安全性を最優先に考えなければならない。これについて遠藤は、注意が必要だ。

ゴール前においては、遠藤もファビーニョもミドルシュートを持っており、引かれた相手に対して脅威になり得るだろう。

ボール非保持時は、両選手ともに素晴らしい守備を披露するが、遠藤はより人への意識が強く空中戦で優位に立つことができる。ファビーニョは、遠藤に比べると人へのアプローチが弱く、それよりもボールの進行を制限したり攻撃を妨げたりする能力が非常に高かった。

リバプールの現状に、貴重な非HG枠に、遠藤が選ばれた理由は十分過ぎるほど揃っている。ここからの日本の主将の活躍に期待したい。

ページ 2 / 2

名前おれお
趣味:サッカー観戦
好きなチーム:リバプール

プレミアリーグを中心に週に2、3試合サッカー観戦しています。応援しているのはリバプールで、好きな選手はロベルト・フィルミーノです。

筆者記事一覧