ワールドカップ 女子サッカー

【女子W杯】グループ通過ナイジェリアとジャマイカが魅せたもの

レベッカ・スペンサー(左)アシサト・オショアラ(右)写真:Getty Images

7月20日に開幕したFIFA女子ワールドカップ(W杯)オーストラリア&ニュージランド大会は、いよいよ8月5日からノックアウトステージの戦いに突入する。女子W杯史上最多となる32カ国が出場していることもあり、ここまでのグループステージの各国様々な試合光景から、改めて女子サッカーの面白さや可能性を感じているのではないだろうか。

ここでは、グループBを2位通過したナイジェリア女子代表(FIFAランキング40位)と、グループFを2位通過し初のベスト16の切符を手にしたジャマイカ女子代表(FIFAランキング43位)に注目してみたい。誰もが少なからずFIFAランキング上位国が並ぶベスト16を想像していたであろう中、同代表2カ国はそれを覆し、試合を通じて感動を人々へと与えたとも言える。


ジャマイカ女子代表 GKレベッカ・スペンサー 写真:Getty Images

ジャマイカには守護神GKスペンサー在り

8月2日に行われたグループF(第3節)ジャマイカ対ブラジルの試合は、おそらく今後も世界的に語り継がれれるであろう歴史的な1戦となった。強豪ブラジル(FIFAランキング8位)は、前半後半ともに安定したパスの精度や得点へと繋げるチャンスの作り方など、上位国らしい動きが目に見える。ジャマイカは試合終了のホイッスルが鳴るまで、とにかく必死にゴールを守り切るしかないという状況だった。

しかし最終的に試合は0-0の引き分けに終わり、グループFの順位としては、ブラジルに勝点僅か1上回ったジャマイカが2位でベスト16へと進出するというマジックが生まれたのだ(1位通過はフランス)。

同試合のブラジルのボール保持率は73%と高い数値をキープ。シュート数もブラジルが18に対し、なんとジャマイカは3。そこには明らかにレベルの差が存在したが、ジャマイカ代表GKレベッカ・スペンサー(トッテナム・ホットスパー・ウィメン)のボールを予測する守備能力の高さと、ストライカーであるFWカディジャ・ショー(マンチェスター・シティ・ウィメンズ)の力強さと頼もしさがチームメイトたちを鼓舞し、試合終了まで持ち堪えたように見受けられた。

ジャマイカ代表チームは2010年に資金不足から一時解散をしているが、4年後にレゲエ音楽の先駆者ボブ・マーリーの娘セデラ・マーリーが資金を募り、前回大会(2019年フランス大会)でW杯初出場を果たしている。選手たちがグループ通過に顔を覆い流した涙には「歴史は変えられる」という確信をもたらされ、今後の女子サッカーの可能性を感じさせられた瞬間にもなった。

一方のブラジルも、この敗退により新たな強い目標が生まれることだろう。そして歴史的な試合を見ていた次世代の子供たちの中で、将来の期待を胸にボールを手にとるきっかけが生まれるかもしれない。勝負以上のスポーツを越えた多くの事象が結びついていることを感じさせられた。

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名前:Molly Chiba
趣味:自然散策、英国のあれやこれやをひたすら考えること
好きなチーム:トッテナム・ホットスパーFC

東北地方の田園に囲まれ育ちました。英国のフットボール文化や歴史、そして羊飼いやウールなどのファッション産業などに取り憑き、没入している日本人女性です。仕事のモットーは、伝統文化を次世代に繋ぐこと。

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