やや甘かった前線からの守備
ノックアウトステージに向けてなでしこジャパンが修正すべき点のひとつは、前線からの守備だ。
スペイン代表の2センターバックがボールを保持した際、ここからMFテレサ・アベレイラ(中盤の底)へのパスコースを、なでしこジャパンの1トップ植木が塞ぎきれていない場面がちらほら。MF林穂之香と長野の2ボランチが飛び出してアベレイラに寄せていたが、これによりなでしこジャパンの中盤とセンターバックの間が開く場面も散見された。
相手の2センターバックがアベレイラへの縦パスを多用しなかったため、大事には至らなかったものの、ここを起点になでしこジャパンの守備ブロックが崩されてもおかしくなかっただろう。ノックアウトステージでは、この僅かな綻びが命取りとなりかねない。守備時の1トップの選手の立ち位置や役割を改めて確認したいところだ。
より磨き上げたい自陣での守備
5人の最終ラインと、4人の中盤によるなでしこジャパンの自陣撤退守備はほとんどの時間帯で安定していたが、5バックの背後をスペイン代表に突かれる場面もあった。
最たる例は、前半5分のスペイン代表の攻撃シーン。なでしこジャパンの自陣右サイドでスペイン代表のパス回しが始まると、MFアレクシア・プテジャスがFWマリオナ・カルデンティにバックパスを送る。このパスを受けたカルデンティがすかさずゴール前へクロスを送ると、このボールがなでしこジャパンの最終ラインの背後を突いたMFアイタナ・ボンマティのもとへ。ボンマティは僅かにボールに届かなかったが、この場面においてはスペイン代表の攻撃がなでしこの守備を凌駕していた。
5バックは4バックと比べて最終ラインの人数が多く、ゆえにラインを揃えるのが難しい。そのうえ相手チームに一旦自陣の深い位置を使われ、そこからバックパスをされてすぐさまゴール前にクロスボールを送り込まれると、最終ラインが乱れてオフサイドをとりにくい。この攻撃は5バックのチームを攻略するためのセオリーだが、スペイン代表が前半5分に仕掛けたのはまさにこれであり、なでしこジャパンは危うく失点するところだった。
この場面では、クロスの出し手となったカルデンティに対する宮澤や林のプレスが遅れており、なでしこジャパンにとって危険なパスがゴール前に送り込まれている。クロスの出し手へのアプローチをより徹底したいところだ。
また、同じ場面でDF南萌華が自身の背後(死角)をボンマティに突かれており、左ウイングバックの遠藤も同選手を捕捉できていない。センターバックとウイングバックの間から侵入してくる相手のマークを、誰が担うのか。この点も明確にする必要があるだろう。大勝した試合のなかで垣間見えた守備の課題を、なでしこジャパンの面々が改善できるかに注目したい。
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