湘南のビルドアップはまたも手詰まりに
この日の鹿島の守備は鈴木優磨と垣田裕暉(前半23分に染野唯月と交代)の両FWで、湘南の3バックからMF茨田陽生(中盤の底)へのパスコースを塞ぐというもの。鹿島の2トップに対し、比較的フリーになりやすい舘幸希と大野和成の両DF(3バックの両脇の選手)を起点にボールを前に運びたかったが、湘南はこの優位性を活かせなかった。
気がかりだったのが、最終ラインからのパス回しの際に舘がサイドに開きすぎてしまい、同サイドのウイングバックとほぼ同列の位置に立ってしまう場面が散見されたこと。これにより舘のパスの選択肢が無くなり、湘南のパスワークも手詰まりになっていた。
また、ウイングバックが自陣の大外のレーン(タッチライン際)やセンターバックとほぼ同列の位置でパスを受けることで、相手のハイプレスの標的となってしまう悪癖も相変わらず。これは第11節の柏レイソル戦、第14節セレッソ大阪戦でも浮き彫りになった問題点だが、鹿島戦でも改善が見られなかった。
未だ手付かずの攻撃配置が最悪の結果に繋がったのが、鹿島戦の前半41分。この場面では途中出場のDF石原広教(右ウイングバック)が自陣後方へ降りて舘からのパスを受けたが、鹿島のDF安西のプレスを浴びたことで、縦パスしかプレーの選択肢が無い状況に。センターサークル付近へ降りた町野が石原からのパスを捌こうとしたが、鹿島DF関川に狙われていた。
町野からボールを奪い、湘南陣内でドリブルを始めた関川に茨田がたまらずファウル。鹿島の先制ゴールは、このファウルによって得たフリーキックから生まれた。
失点に関する山口監督の見解は
湘南の山口智監督は鹿島戦後の会見で、失点に繋がった自軍のパスワークについて言及。選手のプレー選択に問題があったとの見解を示している。
「失点に関しては相手の素晴らしさもあったと思いますが、自分たちがバックパスをしてああいうことが起こっているので、そこは口酸っぱく言わなければいけない。下げなくていいときに下げてああいうことが起こっているのが現状。プレーは尊重するけどそれを選ばないといけない状況だったのかというのは振り返りたいと思います。(中略)1点取られてからの戦い方というのは消極的だったと思いますし、単純にボールを蹴ってしまう、(プレーを)選ぶことができていたのにできなくなったというのが後半あったと思います」(湘南ベルマーレの公式ホームページより引用。一部補正・省略)
今回の失点の原因は、ボールを効率よく敵陣に運ぶための配置がチーム全体に落とし込まれていなかったことだろう。石原のパスの選択肢を増やすべく自陣へ降りた町野のプレーも、責められるべきものとは言い難い。無論、選手個々のプレー選択や技術も勝敗を左右する要素だが、敗因をこれだけに帰結させないことが現17位の湘南には必要だ。
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