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レオ・ザ・フットボールが新書籍に込めたサッカーの真理【インタビュー】前編

インタビュー中のLeo the football氏

「選手に対するリスペクトは他の監督より多分ある」

ー北海道コンサドーレ札幌のDF西大伍選手が、シュワーボ東京の練習に参加されていましたね。「監督と選手が一緒になって考える雰囲気が良い」とのフィードバックが西選手からありましたが、これについて率直にどう思いましたか?

レオ:嬉しいですね僕イコール戦術、というイメージがみんなにはあると思います。頭でっかちで「これだけやれ」みたいな。でも僕が教えているのは上手くいくためのセオリーです。遊びが無いものではなくて、例えばイニエスタが正対を使って右にも左にも抜ける、相手選手が寄せてくる前に好きな方向にパスを出せるといった感じ。これをチームの原則に組み込んでいるだけです。

この原則すら教わっていないと、相手から逃げるように自分のへそ(体)を向けてボールをキープしてしまって、相手が寄せてくるから逃げられない。選手が自由にプレーできないんです。選手が自由にプレーできるための原則と、自由にプレーしてくる相手への対応策を、僕はシュワーボの選手に教えています。枠を設けて、そのうえで好きにやっていいよというイメージなんですけど、それを西さんが感じ取って下さったのかなと。

ー先日、私もシュワーボの練習を見学させて頂きました。確固たる原則をベースに、選手とレオさん、選手同士が実りある議論をできていたのが印象に残っています。

レオ:僕が修正を施して、ミニゲームが上手くいきだした日ですよね。サッカー以外の仕事でもそうだと思うんですけど、上手くいっていないときに「今のこうしたほうが良かっただろ」という教え方があるじゃないですか。「今の」というのはもう過去のことで、それと同じシチュエーションが起きるとは限らなくて。なので僕の教え方としては、マニュアルを作ってあげるみたいな感じです。

シュワーボに関しては、この本で書いてある原則論がマニュアル。あの日のミニゲームでは選手の動きが原則から外れていましたので、一回チームのルールブックに立ち返ってみようと。「今みんながやっているサッカーは選択肢が1つしかないけど、原則を守るだけで選択肢が3つ出てくるよね」という指導を、身振り手振りでしたと思うんですよ。「今の何でトラップしないんだ」とか、「今の走っとけよ」じゃなくて、この説明書に従っていたらここ走って良い場所だな、ここは止まっておいたほうが良い場所だなというのが理解できる。

現場で実践する、それによって良い結果が出る、授業にできる、本になる。必要があればブラッシュアップする、現場で実践する、また良い結果が出る、本になるという感じ。現場と研究室を行き来して作ったのが「蹴球学」なんです。マーケティング的に良い言葉が並んでいるだけではなく、これにちゃんと実が宿っている感じがしますね。

ーあのときは選手が良い意味で変容していました。素晴らしかったと思います。

レオ:練習でも試合でも、僕は選手を羨ましい目で見ているんですよね。「かっこいいな男として」みたいな。監督である自分が選手をどう助けてあげられるかというと、「この人のもとだと良い戦いができる」「俺のポテンシャルを使ってくれている」という実感を持ってもらうことだと思うので。選手に手応えを感じてもらわないと監督の存在意義がなくなるので、ミニゲームの修正は上手くいって良かったです。

北海道コンサドーレ札幌 DF西大伍 写真:Getty Images

ー西選手も「プロも本来こうあるべきだよね。プロだと監督の言うことが絶対で、どうしても選手との上下関係が生まれる」と仰っていました。レオさんもそう思いますか?

レオ:そう思いますね。僕の場合は基本的に選手経験がないので、選手に対するリスペクトは他の監督より多分あると思うんですよね。「俺より(選手のほうが)上手いし走れるよね」という気持ちが根底にあるんですよ。なので、どうしたら選手を助けられるかとか、どうしたら選手のためになれるかを考えています。

1本の線とか、ひとつの点で指示すると、そこからズレることができなくなって人はストレスを感じるじゃないですか。「これしかやっちゃダメなんだ」という感じで。これは普通の教え方なんです。僕も最初はそうでした。ただ、これはできる人ができない人に教えるやり方です。枠で物事を捉えてあげると、「この道好きなように歩いていいし、何ならゆっくり行ってもいい。そのときに合わせてやってね」という感じになる。「この細い道だけ歩きなさい」という感覚ではなくてね。

僕がプレイヤーじゃなかったからこそ、コンプレックスが良い方向に出たのだと思います。選手経験がある監督だと、自分の成功体験をもとに指導する。それで実際に良い結果が出れば、悪いことではないです。僕の場合はその人たちよりも結果を出さないといけませんし、その人たちよりもハードモードのなかで選手の心を掴んだり、一緒に協力したいという雰囲気を作らないといけない。そのうえでの基準(原則)の設定のしかたというのが、今の指導法に繋がったのかなと思います。

ー知性と情熱が良いバランスで噛み合っている。このレオさんの指導に、選手たちが付いてきている感じは伝わりました。

レオ:嬉しいです。僕が理詰めで話すからかもしれませんけど、今までサッカーをやってきた人のイメージは「(戦術とは)これをやれ。これをやるな」だけだと思うんですよ。なので、戦術に対して窮屈で悪いイメージがある。本来は「これがあるおかげで楽しくなる」という性質のものなんです。

お笑いの大喜利に近いですね。お題が何も与えられていない状況で面白いことをやろうとするより、ちゃんとお題を出してもらうと、みんながどんどん答えを出せる。いろんなプレーをするための土台が戦術。

ー戦術で選手を縛っているのではなく、むしろ逆ですね。

レオ:そうそう。ただ、表現を悪くすると縛っていることになるかもしれません。桃太郎のお題が出ているのに、急にドラえもんの話をする人が出てきたら、その人は多分場の空気を壊しちゃうじゃないですか(笑)。

例えばお題として、ロングボールをここに蹴ろうと出します。「さあここからどうしますか。それぞれ面白いことやってね」というのが理想ですね。そうすると相手がこう弾き返すから、ここでボールを回収する。この戦術であれば、低い位置(自陣後方)からボールポゼッションするよりも危なくないし、相手陣内に攻め込めるよねみたいな。

お題にあたる1本目のロングボールの先まで細かく決めてしまう人もいるのですが、戦術で選手たちの目線を揃える。そこから可能性を広げるために、正対などの個人戦術をミックスする。その結果、チーム全体として統率がとれている現象に見えるんです。

ーこの書籍で紹介されているサッカーの真理のなかで、選手の意見やプレーの様子によってブラッシュアップされたものはありますか。

レオ:例えば、講義17の「合理的でない戦術のメリットと活用法」。現場に出ていると相手チームのサッカーも見るじゃないですか。そうすると「なんでこんなやり方(戦い方)をしてくるんだろう」と疑問が湧くときがあるんですよね。「これ、絶対俺ら崩れないよな」という気持ちになるんですけど、合理的でない戦い方をしてきていても、瞬間的に相手にメリットが生まれるときがあるんです。「こんな崩され方もあるのか」となる。作戦が無かったり戦術的ではないチームにこそ起きることです。

再現性の低い戦い方なので、これを選ぶのが良いとは言わないです。ただ、非合理的なサッカーをすることのメリットというのは、他の本に多分書かれていないですよね。基本的にいかに戦術が大事かという話をみんなするので。今回の本には、戦術の話をしっかり書いている一方で、合理的でない戦い方を選ぶことのメリットも書いてあります。現場に出て反対側目線を持てたことで作れた章なのかなと思います。

(後編に続く)

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名前:今﨑新也
趣味:ピッツェリア巡り(ピッツァ・ナポレターナ大好き)
好きなチーム:イタリア代表
2015年に『サッカーキング』主催のフリーペーパー制作企画(短期講座)を受講。2016年10月以降はニュースサイト『theWORLD』での記事執筆、Jリーグの現地取材など、サッカーライターや編集者として実績を積む。少年時代に憧れた選手は、ドラガン・ストイコビッチと中田英寿。

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