昨2022シーズンをもって、15年のプロ生活を終えた元アビスパ福岡DF輪湖直樹。2008年ヴァンフォーレ甲府でプロデビューした後、徳島ヴォルティス、水戸ホーリーホック、柏レイソル、福岡と計5つのクラブに所属。柏ではAFCチャンピオンズリーグ(ACL)にも出場し、福岡ではJ1昇格に貢献するなどの活躍を見せた。
ここではそんな輪湖氏に、独占インタビュー。常に全力。妥協なく身体を張り続け、プレーの波が少ないサイドバックとして15年間戦い抜いたプロ生活や、引退理由について、また現在実施しているパーソナルトレーニングや今後の方針などについて伺っていく。
福岡のクラブ史に名を刻んだ実感
ー2020年、アビスパ福岡のJ1昇格に大きく貢献なさいました。当時の気持ちを教えてください。
輪湖:それまでのサッカー人生で「成し遂げた」と感じる経験はそれほどありませんでした。J1昇格は自分にとって「大きな何かを成し遂げた」最初で最後の経験になり、すごく嬉しかったです。ただ、その瞬間はあまり実感がなくて、時間の経過と共に「クラブの歴史に名を刻めたんだなぁ」と、成し遂げたことの大きさを徐々に実感できました。
ー2020年のチームはとても仲が良い印象でしたが、どう感じていましたか?
輪湖:もちろん仲も良かったですし、チーム全体にすごく自信がありました。あのシーズン(2020シーズン)は新型コロナウイルスの影響がすごくあって過密な日程だったんですけど、その中で出場した選手みんながしっかり活躍できていました。(主力として)出ている11人の選手だけじゃなく、誰が出ても活躍できるというチーム全体の自信と強さが感じられた1年でした。
ーベスト電器スタジアム(アビスパ福岡ホーム)の雰囲気はいかがでしたか?
輪湖:ホームの後押しを感じられる素晴らしいスタジアムだと思います。実際に今年は試合終盤の得点が多くあります。それはサポーターの後押しあってこそです。選手としてプレーしていても、サポーターの熱意を感じていました。特にここ最近はとても良いサポーターが増えているように思います。前向きに選手のことを応援してくれて、本当にチームの一員のような「サポーターとともに戦っているんだ」という印象をすごく受けましたね。
J1とJ2の僅かで大きな差
ーJ2のヴァンフォーレ甲府でプロデビューした後、柏レイソルやアビスパ福岡時代はJ1でもプレーされました。J1とJ2には違いを感じましたか。
輪湖:簡単に言えば、やはり選手個人の質が違います。もちろんJ2の中にもJ1レベルの選手はいますが、全体的な個々のレベルはJ1とJ2で違いがあるかなと感じました。
J1選手のほうが力の出しどころを認識していますね。最後のクロスの質だったり、ゴール前だったら最後のシュートを決めきる質だったり、そこが1番大事だというのを認識しながらプレーしています。小さい差に感じますけど、その僅かな差が実際にはとても大きな差を生んでいますね。「どこで力を発揮するべきなのかを見極める力」というのは、やはりJ1の選手の方が長けていると感じますね。
ー現役時代、サポーターから「輪湖ちゃん」と呼ばれる機会が多くありました。どのように感じていましたか?
輪湖:チーム内でそう呼ばれることがなかったこともあって、そこに対してはあんまり何とも思わなかったというか…。でも、親しみを込めて呼んでくれるのは選手としてすごく嬉しいことですし、嫌な感じは全くなかったです。親しみやすくて良かったんじゃないかなと思います。
ー今季(2023年)のアビスパ福岡は開幕から好調ですね。シーズンを通して上位に居続けるためには何が必要だと思いますか?
輪湖:必要な事はたくさんあると思いますが、1つ挙げるとしたら「チームの波をなくす」こと。連敗しないことや、悪い流れを断ち切ることなど、悪い試合を継続しないことが大切です。悪い流れのまま進まないことは上位にいるためにすごく必要です。負けた試合でも、次戦でもう1回良い試合に持っていく、そういうメンタリティは上位にいるために必要不可欠だと思います。
引退セレモニーに至るまで
ー引退決断に至るまでの経緯を教えてください。
輪湖:(2023年)1月末まで、自分が望むレベルのチームからのオファーを待っていました。でも、それが叶わなかったので引退を決断しました。その決断に対して後ろ髪を引っ張られるような、そういうネガティブな感情はなかったですね。
「やり切ったな」という思いはありましたし、それはそれで運命というか「次のステップに進む時なんだな」と自分の中で感じられたので。必要としてくれるチームがなければ辞めなきゃいけません。もちろんまだプレーはできたと思いますけど、どうしてもそこ(現役続行)を、という感じはなかったですね。
ー15年間のプロサッカー人生で、特に印象に残っている出来事を教えてください。
輪湖:いろんな出来事がありましたが、1番と言われたらやっぱり水戸から柏に移籍する時ですかね。(柏レイソルの)下部組織で9年間ずっと育ったので、柏からオファーが来た時のことは1番印象に残っています。
もちろん、実際にピッチでプレーできるか、オファーが来た時には分からないんですけど、でも「やっとスタートラインに立てたな」という気持ちでしたね。それまでもプロとして6年間過ごしていましたけど「頑張っていれば報われるんだな」とすごく実感できた瞬間でした。
ー今年3月4日には、その柏レイソル戦で引退セレモニーを経験されました。どのような思いでしたか?
輪湖:「ここまで頑張ってきて良かった」とすごく感じた時間でした。あのタイミングでアビスパとレイソルの試合がなければ実現しませんでしたし、サッカーの神様からのご褒美なんじゃないかなと思えた瞬間でしたね。レイソルでも長くプレーしましたし、アビスパでも長くプレーしたので、その両方のサポーターの前で引退セレモニーができたことはサッカー選手としてすごく嬉しいことです。本当に幸せ者だなと感じました。
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