
身近な存在になったJクラブ
2023年現在、JリーグはJ1、J2、J3の3部制を備え、計60のクラブが所属。41都道府県に拠点があり、Jクラブがない6つの県にもJリーグを目指すクラブが存在している。1部制8府県の10チームからスタートしたJリーグ。30年が経過した現在、合併消滅したクラブは横浜フリューゲルスのみ(1999年マリノスと正式合併して消滅)。他国と比較しても安定感は突出している。
生まれ育った土地、進学や就職で移り住んだ土地など、各地にプロのサッカークラブがあることは「おらがまちのクラブ」という意識を生みやすく、スポーツを通じて「郷土愛」「地元愛」「地域のプライド」を感じる人の増加につながっている。
J2、J3リーグでプレーしていた選手が日本代表入りするケースも珍しくない近年、Jリーグから欧州など海外クラブに移籍する選手も増加傾向にあり「おらがまちのクラブ」で活躍した選手が世界で戦う姿を親戚のような気持ちで見守ることも、サポーターの楽しみとなっている。

他国からも注目される存在に
Jリーグは視点を世界にも向けており、2023シーズンでは中国、タイ、インド、ネパールなどアジアの国々に加えオーストラリア、ドイツ、スイス、ガーナ、ナイジェリアなど、さまざまな国で試合が放映されている。
スポーツデータサイト『Opta』のパワーランキングによると、J1リーグは平均的なチーム力に基づくアジアのリーグランキングで1位。J2リーグも8位に入っており、非常に高い評価を受けている。突出したクラブがないことからアジアチャンピオンズリーグ(ACL)での戦績は芳しくないものの、どこが優勝するか降格となるか予想がつかない点は欧州のトップリーグにはない魅力だろう。

地道なホームタウン活動の行く末は
クラブ数が増加したことで、優勝争いとともに昇格・残留争いが激化。加えて、全体的な予算規模も拡大しているJリーグ。一方で、拡大路線と相反する「地域との共生」が深化していることは興味深い。昨今、同じ都道府県に複数のクラブが存在するケースも珍しくなく、本拠地を指す「ホームタウン」内の盛り上がりも見られる。
Jリーグは「ホームタウン活動」を重要視し、規約には「Jクラブはホームタウンと定めた地域で、その地域社会と一体となったクラブづくりを行いながらサッカーの普及、振興に努めなければならない」と記されている。つまりはサッカーの競技活動だけでなく、欧州でよく見られる「総合型スポーツクラブ」を目指すクラブが増加しているのだ。
例えば、J1の湘南ベルマーレは、2002年に「特定非営利活動法人湘南ベルマーレスポーツクラブ」を設立し、ビーチバレーやトライアスロン、フットサルなどのチームをサポートしている。J2の東京ヴェルディも2018年「一般社団法人東京ヴェルディクラブ」を設立し、ビーチサッカーやeスポーツなどをサポート。その他にも、横浜F・マリノスらが同様の試みをしている。
2022年に報告されているホームタウン及び活動区域内での「ホームタウン活動」は、全クラブ合計で23,573回。1クラブで平均406回も活動しており、地域密着を超えた「地域との共生」が各地で進行している。
サッカー至上主義でなく、地域と共生することでその地に浸透した太い根は、やがて太い幹となり多種多様な枝葉を付け、いずれはトップチームの強化にもつながることだろう。30周年を迎えたJリーグの成長は、決して爆発的とは言えないが、地道かつ真摯な姿勢は今後の日本サッカー界を更に大きく強くしてくれると信じている。
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