ワールドカップ アルゼンチン代表

堅守遅攻のアルゼンチンがクロアチアを手玉に。あるようで無かった隙【W杯試合分析】

アルゼンチン代表 FWフリアン・アルバレス 写真:Getty Images

試合を膠着させるためのボール保持が奏功

自陣後方やミドルゾーンで守備ブロックを敷き、奪ったボールを縦に速く繋ぐ。この“堅守速攻”という概念は今やサッカー界に行き渡っているものだが、アルゼンチン代表の戦い方は一風変わっていた。

今のアルビセレステス(白と空色)に根付いているのは、試合を意図的に膠着させるための遅攻。相手のカウンターの起点となりかねないリスキーな縦パスを避け、2センターバックや2ボランチが極力最終ライン付近でボールを保持。クロアチア代表の最終ラインの背後や、フリーのメッシにパスをつける場面はあったが、攻撃のテンポを上げようとする姿勢はあまり感じられなかった。

消極的に見えるボール保持やパスワークで、相手の攻撃時間やカウンターの機会を奪う。この戦い方で試合を膠着させたアルゼンチン代表は、前半32分にフェルナンデスが突如浮き球パスを繰り出しチャンスメイク。先述の通り、これがアルバレスのPK奪取に繋がっている。

この場面では、アルビセレステスの漫然としたボール保持に慣れていたクロアチア代表の選手たちの集中が切れており、最終ラインが不揃いに。この隙をフェルナンデスとアルバレスに突かれる恰好となった。

2点目もロングカウンターから生まれたが、今回のアルゼンチン代表の勝因は、持ち前の“堅守遅攻”でクロアチア代表に試合の主導権を渡さなかったことに尽きるだろう。決勝でもこの賢い試合運びを完遂できるかに注目だ。

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名前:今﨑新也
趣味:ピッツェリア巡り(ピッツァ・ナポレターナ大好き)
好きなチーム:イタリア代表
2015年に『サッカーキング』主催のフリーペーパー制作企画(短期講座)を受講。2016年10月以降はニュースサイト『theWORLD』での記事執筆、Jリーグの現地取材など、サッカーライターや編集者として実績を積む。少年時代に憧れた選手は、ドラガン・ストイコビッチと中田英寿。

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