命運を分けた両監督の采配
試合の潮目が変わったのが、クロアチア代表のズラトコ・ダリッチ監督がアンドレイ・クラマリッチに替え、マリオ・パシャリッチを投入した後半23分以降。日本代表の攻撃時にパシャリッチが自陣右サイドへ下がり、一時的に5バックを形成することで、三笘のドリブルコースを埋める。ジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督が率いるアタランタに在籍し、マンツーマン守備を叩き込まれているパシャリッチは、ダリッチ監督より与えられた三笘への密着マークというタスクを完遂。守備も精力的にこなせる27歳のアタッカーを三笘のサイドに置く、相手指揮官の的確な采配により、日本代表の攻撃力は削がれた。
グループステージ第1節のドイツ代表戦、第3節のスペイン代表戦では積極的な選手交代や布陣変更で試合の流れを変え、日本代表を勝利に導いた森保一監督。この事実は今後も称えられるべきだが、今回のクロアチア戦ではダリッチ監督を上回る一手を打てず、むしろ選手交代で戦況を悪化させてしまった。
クロアチア代表の左サイドバック、ボルナ・バリシッチとの1対1を度々制していた伊東を、同30分より2シャドーの一角に据えたことで、右サイドの攻撃力も低下。グループステージ第2節のコスタリカ代表戦と同じく、俊足の伊東を密集地帯であるハーフスペース(ペナルティエリアの両脇を含む、左右の内側のレーン)でプレーさせる作戦は不発に終わった。ドイツ戦で機能していた堂安と南野の2シャドー、及び三笘の3人によるスピーディーなパスワークに賭けたほうが良かっただろう。
また、前田と同じく相手DFを背負ってのポストプレーが不得意な浅野拓磨を投入したことも、攻撃の停滞の原因に。クロアチア代表に押し込まれ、自陣に閉じ込められた試合終盤に、ポストプレーで味方が攻め上がる時間を稼げる選手がピッチ上に存在しなかった。前田や浅野と比べ、ポストプレーが計算できる上田綺世や町野修斗のいずれかを投入していれば、複数人が連動するロングカウンターを発動できたかもしれない。ドイツ戦でゴールを挙げた俊足の浅野に対する、クロアチア代表守備陣の警戒心は強く、同選手頼みのカウンターは通用しなかった。
「(試合の)入りは悪くなかったと思いますし、前半はパーフェクトな流れで、後半もしっかり(守備)ブロックを敷いて、失点せずに2点目を取りにいくところでした。追いつかれた場面は対応が難しい部分もありました。そのままじれずにやっていくことに関してはゲームプラン通り進んでいきましたけど、PKはしようがないというか、蹴った選手たちを責めることはできないです。チームとして、あそこでPK戦になってしまったところが敗因かなと思います」
今回の敗因は、遠藤が試合後のフラッシュインタビューで発したこのコメントに尽きるだろう。試合を決定づける追加点を奪うための“あと一手”が、ベスト8進出には必要だった。
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