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ラヒーム・スターリングの「成功への道」シューズに込められた想いとは

チェルシー FWラヒーム・スターリング 写真:Getty Images

2022年7月からプレミアリーグ、チェルシーで可憐なプレーを繰り広げているイングランド代表FWラヒーム・スターリング。代表では数度に渡ってキャプテン務め、リーグでも数々の記録を残しているが、マンチェスター・シティ所属時(2015-2022)に引き続き、数多くのサポーターを魅了し続けている。

2021年6月11日(故英女王の公式誕生日)には、スポーツにおける人種平等への貢献に対して大英帝国勲章を授与されたスターリング。ジャマイカに生まれ、身長170cmとサッカー選手としては小柄で細身ながら、数々の苦難を乗り越えて現在の地位に辿り着いた。ピッチ外でもそんな自身の軌跡を表現し、例えば想いが込められたいくつかのアパレル商品を発表している。

今年5月には、スポーツブランド「ニューバランス」とのコラボレーションで、イングランド代表選手としての成功の軌跡をテーマにした『Shadow of My Dreams』というシューズ&スパイクシューズを中心とした限定コレクションを発表。10月には同ブランドから『Furon v7 Pro FG “Route to Success”(成功への道)』というスパイクシューズがリリースされた。

特に10月に発表されたスパイクシューズは、スターリング自身のよりプライベートな想いが強く込められた特別なものとなったようだ。「成功への道」という言葉にも、自身の過去の経験に対する想いがギュッと込められている。ここでは、スターリングのこれまでの背景やシューズに込められた想いを覗いてみよう。


ラヒーム・スターリング 写真:Getty Images

ストリートからリバプールへ

1994年にジャマイカで誕生したスターリング。両親は共にジャマイカ人で、母親はジャマイカの元陸上選手の経験を持つアスリートだ。父親はスターリングが2歳の時に不慮の事故で亡くなっており、その後5歳の時に母親と共にイングランドに渡って、ロンドンで暮らすことになる。

引っ越し先の環境は決して良いと言えるものではなく、ロンドンの都会ならではの荒れた雰囲気と、周囲との関係構築の難しさなど、暫くの間精神的にも大変な時期を過ごした。しかし、サッカーボールがあるとスターリングは様々な鬱憤を晴らす事が出来たようで、当時の学校教諭は「彼は素晴らしいストリートフットボーラーだった」と語っている。

10歳の時にロンドンのサッカーユースチームに参加し、約4年間地元の子どもたちと練習を重ねたスターリングは、ロンドン西部のクイーンズ・パーク・レンジャーズ(現在EFLチャンプオンシップ)に所属して経験を積んだ。その後ロンドンを拠点とするアーセナル、フラム、チェルシー、またロンドン地域以外のリバプール、マンチェスター・シティから熱いオファーを受けるようになる。

しかしながら、スターリングの母親はロンドン地域のギャング文化(現在のフーリガリズムのような行動など)を敬遠し、出来るだけロンドン以外のクラブを選ぶようアドバイスをしたようだ。それを受けスターリングはリバプールを選び、2010年に契約を結んだ。

ユースチームでプレーをし、エバートンとの試合の際にプロデビューを果たしたスターリング。さまざまな好機会に恵まれ結果を出し、2014年にはPFA年間最優秀若手選手賞(イングランド国内で最も優秀な若手選手に贈られる賞)を受賞した。2021、22年は、共にマンチェスター・シティのMFフィル・フォーデンが2年連続で受賞をしている。

ラヒーム・スターリング 写真:Getty Images

チェルシーとの契約には深い意味が

その後2015年までリバプールでプレーしたスターリングだが、同年夏の移籍シーズンにマンチェスター・シティからの莫大な金額と共に移籍オファーを受け契約に署名。以降2022年の夏まで、同クラブで活躍する。通算公式試合は337出場で131ゴール94アシストを記録。4度のプレミアリーグ制覇を含む12ものタイトル獲得に貢献した。筆者は未だにシティの水色ユニフォームを着たスターリングがフラッシュバックする。

そして今夏に現在のチェルシーとの契約を果たしたスターリング。そう、チェルシーはロンドンのクラブである。これまで母親の主張を尊重しロンドン以外の地域クラブを選んできた訳だが、それを超えて自身の意志で署名をした訳だ。つまり、そこには深い理由が隠れているということだ。

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名前:Molly Chiba
趣味:自然散策、英国のあれやこれやをひたすら考えること
好きなチーム:トッテナム・ホットスパーFC

東北地方の田園に囲まれ育ちました。英国のフットボール文化や歴史、そして羊飼いやウールなどのファッション産業などに取り憑き、没入している日本人女性です。仕事のモットーは、伝統文化を次世代に繋ぐこと。

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