明治安田生命J1リーグの第32節が10月8日に行われ、FC東京と湘南ベルマーレが対戦。
後半33分に、湘南の途中出場のFW阿部浩之がMF茨田陽生からのパスを受け、ペナルティアークの後方からミドルシュートを放つ。これがゴールネットに突き刺さり湘南が先制すると、同37分にも途中出場のFW町野修斗が自陣右サイドからのドリブル突破で追加点をゲット。同クラブが2-0で勝利している。
直近のJ1リーグ4試合連続で勝ち点を積み上げ、13位に浮上した湘南。ボール支配率でFC東京(現7位)に上回られながら、いかにして試合の主導権を握ったのか。まずはこの点から分析する(ボール支配率は湘南40%、FC東京60%:データサイト『SofaScore』より)。
今節も可変守備が機能
自陣後方からのパスワークでリズムを掴もうとした基本布陣[4-1-2-3]のFC東京に対し、湘南はハイプレスで応戦。FC東京の最終ラインからアンカー東慶悟へのパスコースを、ウェリントンとタリクの2トップが絶え間なく塞いだ。
湘南は前節のセレッソ大阪戦で繰り出した[5-3-2]と[5-2-3]の2つの布陣による可変守備を、今節も継続。[5-3-2]の守備隊形で構える場面もあったが、FC東京が右のハーフスペース(ペナルティエリアの両脇を含む、左右の内側のレーン)からビルドアップを試みた際は、左インサイドハーフの平岡大陽が前線に飛び出してハイプレスに加勢。相手の左ハーフスペースからのビルドアップには、右インサイドハーフの池田昌生が強襲した。
「前線から下がるのではなく、高い位置からみんなで良いバランス、良い距離感で守備ができたので、(次節も)そこは継続していきたい」
今節も3センターバックの中央を務め、的確なラインコントロールで湘南の守備を牽引したDF山本脩斗の試合後コメント(湘南ベルマーレ公式ホームページより引用)からは、手応えや自信が感じられる。同選手が振り返った通り、湘南の[5-2-3]の隊形によるハイプレスの効果は絶大で、特に前半はFC東京の攻め手がレアンドロ、ディエゴ・オリヴェイラ、渡邊凌磨の3トップへのロングボールに限られていた。
フィールドを縦に5分割する5レーン理論における中央の3レーンを、湘南の2トップやMF陣が埋めながらハイプレスをかけ続けたこと。これが今節の勝因のひとつと言って差し支えないだろう。ハイラインを敷きながらFC東京の俊足3トップを相手に走り負けせず、最終ラインの背後をケアし続けた湘南の3センターバックや、石原広教と中野嘉大の両ウイングバックの奮闘も光った。
2012年から2019年シーズンの途中まで指揮を執ったチョウ・キジェ監督(現京都サンガF.C.)のもとで、縦に速い攻撃や球際での激しさを前面に出してきた湘南。「攻撃的で、走る意欲に満ち溢れた、アグレッシブで痛快な湘南スタイル」をクラブの哲学として掲げており、これは浮嶋敏前監督や山口智現監督のもとでも受け継がれた。
チョウ監督時代より磨き上げたハイプレスのみならず、浮嶋前監督や山口現監督のもとでは相手の出方や試合展開に応じて[5-3-2]や[5-4-1]での自陣撤退を選び、試合をコントロールしている。今季もJ1残留争いに巻き込まれているとはいえ、戦術の幅を広げて湘南スタイルを進化させた浮嶋氏と山口監督の手腕は称えられるべきだろう。
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