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J1歴代トップ!驚異の防御率を維持するアビスパ福岡GK村上昌謙

アビスパ福岡 GK村上昌謙 写真:Getty Images

大幅な成長を遂げた2021シーズン

2021シーズン、昇格組として5年ぶりにJ1に挑んだアビスパ福岡だったが、開幕前の予想は芳しいものではなかった。期限付き移籍で加入していた主力が複数抜けたことに加え、GKセランテスの穴が大きいと考えられていたことも理由の1つだ。

GK杉山力裕や山ノ井拓己、新加入の永石拓海とのポジション争いを制した村上は、開幕節からスタメンに名を連ねるも3試合で7失点。チームとしても個人としても、J1の洗礼を浴びることになる。村上のJ2で高く評価されていたセービング能力の高さは確かな一方で、クロスなどハイボールへの対応がまずく、具体的にはキャッチかパンチングかの判断が不正確だった。

ミスをしてしまうと自信を失い、プレーが不安定になるGKもいる。しかし、ここでの村上の判断が秀逸だった。少しでもリスクのあるボールに対し、徹底的にパンチングを選択したのだ。パンチングを選ぶということは相手の攻撃を断ち切れず波状攻撃を受けることになりかねないが、長谷部監督率いる福岡は元々相手の攻撃を受ける回数が多く、焦らずに耐えしのぐことには慣れていた。

リスクを避けるようになった村上はミスがなくなり自信を取り戻し、次第に得意のセーブが目立つようになっていく。またパンチングありきで飛び出す間合いに集中できたことで、タイミングを誤ることもなくなり徐々にキャッチを選択することが増加。その頃にはチームもJ1での戦いに慣れ、残留争いを完全に抜け出していた。セービングの上手さが目立つようになった村上も、チームの強みとなり、37試合に出場。初のJ1挑戦で、初の正守護神の座を掴んでみせた。


アビスパ福岡サポーター 写真:Getty Images

凄まじい数字を残している2022シーズン

J1で2年目を迎えた今2022シーズンも、アビスパ福岡の守護神は村上である。白星こそなかったものの、開幕から4試合で2失点と昨シーズンの開幕当初とは異なる堅守を披露している。

さらにキックの精度という新たな課題の克服に向け取り組んでいる村上。その成果の1つが、J1第11節FC東京戦で見せた低弾道のパントキック(ボールをキャッチしたあと手から落とし地面につく前に前方に蹴ること)だ。多くの福岡サポーターを驚かせた新たな武器は、さらに精度が高まればカウンターへ大きく貢献することだろう。

そして今シーズン村上の記録はここまで、12試合で7失点。サッカーでは1試合当たりの平均失点が1を下回れば十分堅守だが、1試合平均はなんと0.58である。

長谷部監督が植え付けた11人全員の守備意識の高さ、ネガティブトランジション(攻から守への切り替え)の速さがあってこそではあるが、それに安定感のあるセービングが相まって、村上のJ1での防御率(90分当たりの平均失点)は驚異の0.85となっている。これは出場時間が2,700分以上のGKの中で、歴代トップの数字だ。

ちなみに2位はジュビロ磐田の黄金期を支えたヴァン・ズワム(0.89)、3位は川崎フロンターレの守護神で元韓国代表のチョン・ソンリョン(0.92)。両選手の名前を見るだけでも、村上の凄さがわかることだろう。それらの選手と比べると、現時点の村上は圧倒的に経験が少ない。

GKは年齢を重ねても活躍している選手が多く、村上は経験を積めばまだまだ成長する可能性を秘めていると言えるだろう。J2でも控え中心だったGKが、出場を重ねたった2年でJ1歴代1位の防御率だ。もしも国内組で構成される7月の「EAFF E-1サッカー選手権2022決勝大会」で村上が日本代表に招集されたとしたら。どんな成長物語を見られるだろうか。

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名前椎葉 洋平
趣味:サッカー観戦、読書、音楽鑑賞
好きなチーム:アビスパ福岡、Jリーグ全般、日本のサッカークラブ全般

福岡の地から日本サッカー界を少しでも盛り上げられるよう、真摯に精一杯頑張ります。

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