プレミアリーグ エバートン

休み知らずのアンチェロッティ。エバートンでの新たな冒険

カルロ・アンチェロッティ 写真提供:GettyImages

2019年12月21日、ナポリの監督解任からわずか11日後、カルロ・アンチェロッティはエバートンの監督に就任した。契約期間は2024年6月まで。エバートンでのデビュー戦はクリスマスのすぐ後、27日の0時(日本時間)に行われるプレミアリーグ第19節のバーンリー戦となる。

アンチェロッティはこれから指揮する新しいチームについて笑顔でこう語る。「エバートンは豊かな歴史を持っている素晴らしいクラブで、サポーターも熱い。オーナーは勝つためのビジョンをしっかり持っている。そのビジョンを実現させるためにクラブの関係者と一緒に頑張りたいと思います」

これからアンチェロッティは南野拓実が所属している王者のレッズとダービー戦も戦うことになる。次のマージーサイド・ダービー(エバートン対リバプール)は2020年3月15日、プレミアリーグ第30節(時間はまだ未定)だ。

カルロ・アンチェロッティ 写真提供:GettyImages

サッカー無しではいられない

しかし、なぜアンチェロッティはこんなに早く次のチームでの挑戦を選んだのだろう…。彼はナポリを自分から辞めたわけではないため、交渉の必要なくナポリからたっぷりと補償金が発生する予定だったが、エバートンとの契約を結ぶために交渉することを選択し、縁を切った。

彼ほどの素晴らしい実績のある監督なら、少し休んでから新しいチームを探すのが一般的な話です。例えば、セリエA5年連続優勝に導いた元ユベントスのマッシミリアーノ・アッレグリ監督は、2019年5月17日に退任を決めてから、慌てることなく長い休暇をとっている。彼の成績であれば、また挑戦したいと思った時には、すぐにチームを見つけるだろう。

アンチェロッティが休まない理由はとても単純なことだと思う。彼はサッカーがないと生きていけないタイプです。他の監督のやり方を研究しながら、ゆっくりと時間を過ごす監督ではありません。バイエルン・ミュンヘンの監督を解任された時にはイタリア代表からのオファーがありましたが、毎日ピッチに立ちたいがために、そのオファーを断ったという。リーグ戦と比べたら代表戦の試合数はとても少ないです。代表監督のメインの仕事は、様々な地域をまわり選手の活躍を分析することで、アンチェロッティにはきっと合わなかった。

そして、ナポリに解任された今もその考えは変わっていないことがわかる。これからはランキング下位にいるエバートンを強くするために、自分のすべてをチームに注ぐ。今から半年でどこまでランキングをひっくり返せるのかはわからないが、間違いなくアンチェロッティはこのチームを少しずつ強くするだろう…。

カルロ・アンチェロッティ 写真提供:GettyImages

バイエルンとナポリ解任の理由

よく考えると、アンチェロッティの解任理由は高い確率で彼のせいだけではない。スタッフや選手と何かが起きてから、クラブ離れるというパターンが多い気がする。

バイエルン・ミュンヘンにいた頃のアンチェロッティの状況は覚えていますか?解任される前のチームは絶好調で、そんなことになるとは誰にも想像できなかった。しかし、監督の考えに納得できない選手が複数人現れ、クラブには解任という選択肢しかなかったという。

バイエルンのウリ・ヘーネス会長は当時こう語った。「カルロに反対した5人の選手がいた。すでにどうにもならない状態になっていたんだ。起用法の部分で問題を抱えていたようだ。このことから私は『もっとも危険な敵は身近にいる』という格言を学んだよ。だから我々はチームを変えなければいけなくなった」

しかし、それは事実ではないと報じているイタリアのメディアも複数ある。イタリアの『tuttomercatoweb.com』によると、アンチェロッティがいきなり解任されたのはへーネス会長とカール=ハインツ・ルンメニゲ氏のトップ争いに巻き込まれたためです。

カルロ・アンチェロッティ 写真提供:GettyImages

ヘーネス会長は、2014年3月14日に2850万ユーロ(約40億円)の脱税の罪で禁錮3年6ヶ月の有罪判決を受けて、会長職を辞任、収監された。その後、しばらくはルンメニゲ氏がバイエルンのマネジメントの中心となり、同氏によってアンチェロッティが指揮官に選ばれた。しかしその後ヘーネス会長がクラブに復帰したため、ルンメニゲ氏とヘーネス会長のクラブのトップ争いに監督が追い詰められたようだ。

また、ナポリに解任された時も確かにクラブの成績はあまり良くなかったが、責任はアンチェロッティだけににあるわけではない。以前のコラム『ナポリはゼロから再スタートすべき。アンチェロッティ体制への移行が成立しない理由』でも述べているので一読していただきたい。アンチェロッティを選んだナポリの当初の計画は、彼の影響で世界トップレベルの選手を呼ぶことだった。しかし、実際にそうにはならなかった。

アンチェロッティはナポリにいた選手でベストを尽くしたが、次のステップアップ(セリエA優勝)のためには戦力が足りなかった。それは彼自身、フロント、そして選手たちのストレスになり、チームが崩れかけた理由となった。また、契約期限を間も無く迎える選手が多く、このチームで頑張る気力をすでになくした選手もいた。

カルロ・アンチェロッティとズラタン・イブラヒモビッチ 写真提供:GettyImages

イブラヒモビッチの件

これまでの解任は全てアンチェロッティの責任ではないと理解しているエバートンは、彼に莫大な金額をかけてチームの強化を任せることにした。数字の細かい公式発表はまだのようだが、英紙『Mirror』によると、彼の年俸は1300万ユーロ(約15億8000万円)になっているそうです。

これからアンチェロッティはエバートンを強くするために頑張ることは間違いないが、トップに近づくには戦力が足りない。そして、今話題になっているのはズラタン・イブラヒモビッチへのアプローチだ。ミランが未だにイブラの獲得に一番近いチームと言われているが、エバートンも(ナポリも)侮れないです。イブラがそのまま引退する話も出てきているが、それは考えにくい…。いや、考えたくもない話です。

名前Uccheddu Davide(ウッケッドゥ・ダビデ)
国籍:イタリア
趣味:サッカー、アニメ、ボウリング、囲碁
好きなチーム:ACミラン、北海道コンサドーレ札幌、アビスパ福岡

14年前に来日したイタリア人です。フットボール・トライブ設立メンバーの1人。6歳の時に初めてミランの練習に連れて行ってもらい、マルディーニ、バレージ、コスタクルタに会ってからミランのサポーターに。アビスパ福岡でファビオ・ペッキア監督の通訳も務めた経験があります。

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