日本代表・海外組 日本代表

キリンチャレンジカップで浮かび上がった4つの視点

著者:秕タクヲ

キリンチャレンジカップが開催され、日本代表は6/5にトリニダード・トバゴ代表、6/9にはエルサルバドル代表と対戦した。
ヨーロッパの主要リーグでの戦いを終えた海外組を中心にメンバーを構成し挑んだ大会だったが、トリニダード・トバゴ戦は0-0、エルサルバドル戦は2-0と1勝1分で終えた。9月から始まるカタールW杯アジア2次予選を前にこの2試合で浮き彫りとなった4つの視点をご紹介したい。


【森保一監督の伝家の宝刀】
従来のフォーメーションでは4-2-3-1メインで挑んだが、この2試合では攻撃時は3-4-2-1、守備時は5-4-1のシステムで戦った。森保監督がかつて率いたサンフレッチェ広島の真骨頂が日本代表で出ることに。
守備時は5枚でしっかりブロックを形成し、相手に攻撃させないようケアに努めた。カウンターを受けそうになるシーンも冨安健洋、昌子源、畠中槙之輔の集中力でリスクを摘み取った。この2試合決定機を作られたシーンは1、2回だ。
更には攻撃面では長友佑都、酒井宏樹、伊東純也、原口元気の駆け上がりを狙った意図も見受けられた。彼らの動き出しは相手ディフェンスに守備の的を絞らせない効果を生み、中島翔哉や堂安律がチャンスになりやすい形でボールを受け取ることができる。トリニダード・トバゴ戦では中島の突破や堂安のキープから酒井が右から回り込んでチャンスメイクするなど、手厚い攻撃を遂行することができた。
また3バックでありながら、前にスペースがあれば冨安はどんどんドリブルしてボランチを助ける動きがあったことも言及しなければならない。



【決定力欠乏】
新たなフォーメーションで挑んだ森保ジャパン。2試合通してアタッキングサードへの侵入までは幾度となくできたが、そこからの決定力が課題として浮き彫りになった。完全に崩したゴールはエルサルバドル戦の2点目くらいだろう。トリニダード・トバゴ戦では相手GKの好セーブがあったことも事実ではあるが、25本放ったシュートが実を結ばなかったことは反省点だ。しかしシュートまで持ち込む姿勢はこれまでの日本代表とは違う好材料ではないと考える。ラストパスの正確さやシュートブロックさせないほどにディフェンスラインを揺さぶる技術力が必要であると言えるだろう。



【中島の周りを活かせる選手が少ない】
中島の持ち味は左サイドからのカットインや精度の高い配球であると見ている。しかし卓越した技術で日本代表の攻撃起点となっている中島に連動する選手が少なくせっかくのチャンスを棒に振ることがあった。
左サイドに幅を利かせたり中央で攻め手を探るときの中島に対して相手ディフェンスもプレッシャーをかけるが、そこでバランスが崩れたスペースを日本代表が生かしていかなければならないと考える。
その中でウィングバックで起用された長友の動きは評価されるべきだ。ディフェンダーを釣り出しスペースを作る役割を徹底し、中島との親和性を最大化させながら日本代表の左サイドを攻撃しやすいシステムを生み出していたと考える。
更にここで柴崎岳や南野拓実がインサイドからの飛び出しができればよりゴールに近い位置でチャンスメイクできることになる。「中島を持った時の周囲の連動性」、これが今後の日本代表の課題になるだろう。



【限られた攻撃パターンから変わろうとしている】
森保ジャパン発足以降、前線のキーマンとして大迫勇也が1トップに立ち、彼の動いたスペースに南野、堂安、中島が飛び込むパターンが多く見受けられた。しかし、このプランが機能せずカタール代表に決勝戦で敗れてしまった。中島の不在もあったとはいえ、攻撃パターンを増やす必要性を感じる教訓になった。あれから5ヶ月、9月からW杯アジア2次予選が始まろうとしている中で攻撃の明確なプランニングが確立されていただろうか。
限られた攻撃戦術の要因は「生かす側」と「生かされる側」の明確化がはっきりされていないところにあると分析する。特に生かされる側の人間が少ない。どの選手もボールを足元で受け取り、自身の起点から攻撃を始めたがっている。カウンターの時もドリブルでボールを運んでいるが、他の選手はペナルティエリア中央に固まってパスを出そうにも出せずにカウンター失敗に終わったシーンもあった。生かされる選手がいればこうしたカウンターも成立しフィニッシュに向かうことだろう。
その中で原口や南野のプレーは今後の日本代表にとって1つの光明ではないだろうか。トリニダード・トバゴ戦では途中出場、エルサルバドル戦ではスタメン出場し、与えられた時間の中で積極的に最終ラインの隙間やサイドラインに入り込んでボールを受け取る姿勢を維持した。これは結果として「生かされる動き」として成立し波状攻撃を作るきっかけとなった。
他にも伊東純也の前線からプレッシャーをかけるシーンや個人突破できるタイミングを探りながら味方と連動するチームへの調和性もこれまでの日本代表にはあまりなかった現象であり攻撃の選択肢を増やす新たな切り口ではないかと考える。

名前:秕タクオ

国籍:日本
趣味:サッカー、UNO、100均巡り

サッカー観戦が日課のしがないサラリーマンです。かれこれ人生の半分以上はサッカー観戦に明け暮れ、週末にはキルケニー片手にプレミアリーグやJリーグにかじりついています。

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