Jリーグ サガン鳥栖

サプライズをもたらした竹原社長からフィッカデンティに渡された“バトン”

トーレスはJ1第17節・ベガルタ仙台戦でデビュー 写真提供:Getty Images

 再び時計の針を少し戻す。

 曇天の中で後半途中からフェルナンド・トーレスの投入により、歓喜を湧き起こったJ1第17節・ベガルタ仙台戦。終盤のミスからの失点で惜敗を喫したものの、フェルナンド・トーレスがバイタルエリアで前を向いた時の迫力や周りの動きを生かすパスにベストアメニティスタジアム全体が驚嘆の声に包まれた。

 特にサガン鳥栖が攻勢を強めていた75分、吉田豊が中盤でボール奪取に成功すると、ベガルタ仙台の最終ラインの手前のスペースに動きなおしたフェルナンド・トーレスに一度預ける。吉田豊は自ら最終ラインとゴールマウスの間にできたスペースに走りこむやいなや、フェルナンド・トーレスはその吉田豊の動きに合わせる形で絶妙な浮き球のパスを出している。

 これは惜しくもGK関憲太郎に阻まれたものの、他の決定機も含めてフェルナンド・トーレスに相手ディフェンダーのマークを集中させることによる攻略の糸口に可能性を感じただろう。それでも多くのサポーターが、好ゲームを演じながらまたもやホームで勝ち点を獲得できなかったという結果に悔しさを覚えたことは言うまでもない。

 しかしベガルタ仙台戦の2日後に飛び込んで来た金崎夢生の電撃移籍というビッグニュースが、後半戦の巻き返しへさらなる期待感を膨らませることとなる。

 フェルナンド・トーレス、金崎夢生、豊田陽平。この強力な3人の点取り屋のクオリティを最大限に生かすべく、指揮官マッシモ・フィッカデンティがどのようなゲームプランを描くのか。サガン鳥栖サポーターのみならず、数多くのJリーグサポーターの関心が集まる中、J1第18節・ジュビロ磐田戦のキックオフを迎えた。

J1第18節・ジュビロ磐田戦での先発メンバー 

 その注目の先発メンバーだが、フィッカデンティは前線に金崎夢生とフェルナンド・トーレスを起用し、これまで「10」番で起用していた小野裕二のスタートポジションを右サイドに配した「4-4-2」を採用している。ベガルタ仙台戦でも後半にフェルナンド・トーレスと小野裕二を並べ、トップ下が存在する「4-3-1-2」からこのフラットなシステムへの移行を行っており、ある程度予想を立てることができたかもしれない。

 サガン鳥栖はアタッキングサードにおいて、「サイドスペースの攻略」を掲げており、前半戦はサイドバック、インサイドMF、そしてトップ下の3人が絡む形が多かったが、ここに金崎夢生を獲得した理由がある。

 Jリーグ内でも屈指の強靭なフィジカルの持ち主である金崎夢生は、鹿島アントラーズで中央にポジションを張るのではなく、ボールサイドに流れ、サイドの深い位置でボールキープを行う動きを定石としている。それは背番号「44」を身にまとって迎えたデビュー戦でも変わらず、サイドの狭いスペースからの局面打開力を幾度となく披露し、早くも「サイドスペースの攻略」の精度を高める不可欠な存在として周囲から理解されたにちがいない。

 一方、フェルナンド・トーレスはポジションを変える時間帯はあったものの、基本的には最終ライン手前における相手ディフェンダーとの駆け引きに徹している。しかしこの一戦ではジュビロ磐田率いる指揮官名波浩がフェルナンド・トーレスの足元につける縦パスを制限することを目的に、意図的にサイドからのビルドアップに誘導するプレスのかけ方を徹底していたため、前半は効果的なプレーが見られなかった。

 しかし、後半に入り徐々にジュビロ磐田の2ライン間にスペースが見られるようになると、この“エル・ニーニョ(神の子)”は牙を剥く。スペースでパスをもらい前を向くと、ベガルタ仙台戦と同様に積極果敢にドリブルでペナルティエリア内に切れ込んだり、スペースに走りこむ味方の動きに合わせて絶妙なパスを出すなど、サイドではなく中央からの相手守備網を突破するクオリティをゴール裏のサポーターの目前で見せつけた。このスペースの狭いバイタルエリアでの突破がフェルナンド・トーレスがサガン鳥栖にもたらしたオプションであると周囲は感じているだろう。

 そしてそのフェルナンド・トーレスに替わり、万雷の拍手とともにピッチに入った豊田陽平もサイドからのクロスに合わせるなどチャンスを演出するなど、スーパーサブとしての役割を存分に体現していた。

後半戦での手腕が試されるマッシモ・フィッカデンティ 写真提供:Getty Images

 このようにゴールネットを揺らすべく、後半はやや前掛かりとなったことにより、互いに決定機を作るオープンな展開になったものの、サガン鳥栖はこの一戦でも最後まで得点をあげることができず、スコアレスドローで試合を終えている。

 それでも中盤を支える高橋義希は試合後、指揮官フィッカデンティでこれまで再三口にしてきている「攻守両面のバランス」がシステムや先発メンバーが変わっても90分通じて概ね保つことができたことに対する手応えを語るとともに、新戦力とのコミュニケーションを今後トレーニングを通じて増やすことにより、アタッキングサード攻略のクオリティの向上に繋がるという考えを示した。

 試合内容とは裏腹にテーブル上での結果を残せず、歯がゆいシーズンとなっているサガン鳥栖だが、この3人の強力ストライカーがチームにフィットすると、自ずとチーム状況も好転するだろう。「ITADAKI」に向かって進むべく、指揮官フィッカデンティの手腕が改めて試される。

著者:津田翔汰

フットボールトライブ編集部。Calcio,Bianconeroをこよなく愛する若武者

Twitter:@specialheart889

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