プレミアリーグなどのトップリーグと違いテレビ放映権で大きな収入は得られず、チャンピオンズリーグでの上位進出も見込めないベルギーリーグが外国の企業や実業家からこれだけの注目を集めるのには、もちろん外国人選手に対する規制の緩さ以外にも理由がある。米紙『ニューヨーク・タイムズ』は海外資本のベルギー進出の理由として、クラブを比較的安く買収できること、代表チームやスター選手のおかげでイメージが良いこと、若手育成に定評があることなどを挙げている。
もちろんクラブのオーナーには、それぞれの思惑がある。モナコはサークル・ブルッヘを若手育成に活用し、ルーベンはタイの若い選手をユースチームに連れてきているという。テュビズの会長を務める韓国人実業家はクラブを若いアジア人選手の欧州進出のためのプラットフォームにすることを目指しており、昨年は韓国だけでなく日本からも大分トリニータの坂井大将を期限付きで獲得(その後労働許可取得の問題により契約解除)しているように、日本人選手の増加もこうした海外からの投資を背景としている。
またヨーロッパ進出を目指す日本人の若手選手にとっても、ベルギーは魅力的な選択肢と言えるだろう。これまではドイツが主な目的地だったが、最近で言えばフランクフルトの鎌田大地、インゴルシュタットの関根貴大など、Jリーグでは実績を残しながらもドイツではなかなか出番を掴めない選手も少なくない。その点で欧州トップリーグからひとつ下のカテゴリーに位置し(UEFAのランキングでは9位)、日本人の多いドイツ北西部とも近く住環境の整備されているベルギーは悪くないスタートポイントだ。上述のような非常に国際的なクラブであれば、英語でコミュニケーションを取ることもできる。
さらに久保裕也と森岡亮太が国内の強豪で活躍し、豊川が奇跡的なハットトリックでチームの残留に貢献するなど、ベルギー内での日本人選手への評価は上がっている。新加入の植田や関根がインパクトを残せれば、日本人選手への注目度はさらに高まるだろう。この先も国際的な投資を背景に若手選手の進出が続けば、ベルギーがドイツを抜いて欧州における日本人選手の最大の拠点となる日も遠くないかもしれない。
著者:マリオ・カワタ
ハンガリー生まれドイツ在住のフットボールトライブライター。Twitter:@Mario_GCC
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