著者:マリオ・カワタ
1998年のクロアチア代表の快進撃は、ワールドカップの歴史に残るサクセスストーリーだった。以前はユーゴスラビア代表としてプレーしていたダボール・シューケルやズボミニール・ボバンといった名手たちが、初めてのワールドカップで伝統の赤と白の市松模様を身にまとい、紛争の末に独立してからまだ日が浅かった祖国を3位に導く姿は世界中のサッカーファンの心を打った。
あれから20年、フランス代表が当時の偉業の再現にあと一歩に近づく決勝進出を決めた翌日に、クロアチア代表は祖国の英雄たちを超える偉業を成し遂げた。そのタレントの豊富さ、そして勝負強さを含め2つの世紀をまたいだ世代の間には共通点も多く、現在の代表チームも当然先人たちに強いリスペクトを抱いている。イバン・ラキティッチは決勝進出を決める前に「彼らは僕たちのヒーローであり、インスピレーションだ。彼らの辿った道に続きたいと思っている」と語った。
ドイツメディア『ドイチェ・ヴェレ』は、ともに歴史を塗り替えた2つのチームをポジションごとに比較している。まず前線に目を向けると、1998年は大会得点王に輝いたシューケルが絶対的な存在だった。レアル・マドリードでプレーしていたストライカーは驚異的な得点感覚を発揮し、グループステージのアルゼンチン戦を除く6試合でゴールを決めている。日本代表とのグループステージ第2戦でも何度となくゴールに襲い掛かり、アリョーシャ・アサノビッチのクロスを完璧にコントロールしてボレーシュートを叩き込んだ姿は、多くの日本のサッカーファンの記憶に残っているはずだ。当時セリエAで活躍していたアレン・ボクシッチが負傷により大会を欠場していなければ、その攻撃力は更に増していたかもしれない。
今大会のクロアチアの前線を引っ張るマリオ・マンジュキッチは得点力という点では見劣りするが、空中戦を含めその力強さを活かした貢献度の高さは現在のチームに欠かせない。またラウンド16のデンマーク戦の同点弾、そして準決勝の決勝点と重要なゴールを決めており、アシストでも貢献できる万能型ストライカーの決勝トーナメントに入ってからの活躍は目を見張るものがある。大舞台に強いベテランの存在は、クロアチアにとって心強い限りだろう。
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