代表チーム ワールドカップ

ザッケローニ元監督が語った日本代表「大きな誇り」と「欠けているもの」

模範的な態度を称賛された日本代表選手たち 写真提供:Getty Images

 この冒頭の文からさらに、やや日本人を美化しすぎているのではないかと心配になるほど誉め言葉が続いていくのだが、その中に引っかかる文がある。

「素晴らしい試合を展開した日本のフィールド上での態度は立派なものだった。正しい行いをする真面目な選手たちが、それぞれの役割を果たしていた。理由のないラフプレーも、無意味な抗議も、人を欺くこともしない。なぜなら彼らはネイマールではなく、日本人だからだ。彼らは決してW杯で優勝することはないだろうが、それはそんなに重要なことだろうか」

 これはもちろん賛辞として書かれているのだが、ザッケローニ氏の指摘するマリツィアの欠如に繋がる部分がある。実直な日本人たちは徹底的に勝利を追求し相手を打ち負かすための実利的な悪知恵を備えていない、というわけだ。では日本代表は今後、日本文化に存在しないマリツィアを取り入れる努力をし、ヨーロッパや南米のチームのように相手を出し抜くことを覚えていくべきなのだろうか。ザッケローニ氏の以下の言葉は、そうした解決法を望んでいないようにも聞こえる。

「しかし日本人にとってマリツィアの欠如は問題にはならない。代表チームに対する熱意とリスペクトは非常に大きく、ベスト16進出は日本人にとって誇りだ」

「日本人は敗退を世界の終わりではなく、より経験を積んで進歩するためのチャンスとして捉えるんだ」

 実際今回のW杯を終えて、日本サッカーは更なるステップアップへの希望を改めて強くしたように見える。今後世界の舞台で勝ち抜くためには、マリツィアが必要かもしれない。しかし日本文化と相容れない価値観を取り入れるより、それを日本人が既に持っている多くのもので補うことができたらどんなに素晴らしいだろうか。それはあまりにナイーブな考えかもしれないが、もしかしたら日本にはそれが可能かもしれない。ザッケローニ氏が誇りを胸に地元メディアに語った言葉は、改めてそんなこと考えさせるものだった。

著者:マリオ・カワタ

ハンガリー生まれドイツ在住のフットボールトライブライター。Twitter:@Mario_GCC

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