ワールドカップ 代表チーム

昨年11月から5戦勝ちなし。W杯開幕を前に危機感を強める前回王者ドイツ代表

W杯に挑むドイツ代表から漏れたレロイ・サネ 写真提供:Getty Images

 そして敗戦の2日後、レーブ監督はやはり毅然とした態度でロシアに向かう最終メンバーから漏れる4人の選手を発表した。ノイアーの復帰によりGK4番手に降格したベルント・レノ、同様にジェローム・ボアテングの復帰が遅れた場合のバックアッパーだったヨナタン・ターが外れたのは予想通りと言えるだろう。代表デビュー戦でインパクトを残せなかったペーターゼンも、経験のあるマリオ・ゴメスが優先されるかたちで不合格の烙印が押された。

 この3人以外で選外となる有力候補にはマティアス・ギンター、マルヴィン・プラッテンハルト、ユリアン・ブラントらが挙げられていたが、実際に外れたのはレロイ・サネだった。今季のプレミアリーグで10得点15アシストという文句なしの成績を残したスピードスターの脱落は、マンチェスター・シティのファンには信じられないかもしれない。しかし現実には、サネはこれまで代表チームでレーブ監督を納得させるだけのパフォーマンスを見せることができていなかった。先発出場したブラジル代表戦では期待外れの出来で、オーストリア代表戦でも持ち味を活かせていなかった。能力の高さは誰もが認めるところだが、監督がサネをチームに完全に組み込むには時間切れだと判断したのは理解できる。

 オーストリア戦での最終テストに落第した選手がいる一方、ノイアーの起用にめどがついたことは少ない収穫の一つだった。レーブ監督が「ノイアーは良い形で復帰を果たした」と語った通り、2失点こそ喫したが多くのシュートを浴びる中で鋭い反応を見せた。クリアボールを相手に渡すミスはあったものの、今後さらに試合をこなしていくことでコンディションは上がっていくだろう。前回大会の優勝を経験している守護神の復活は、大きなプラスだ。

 戦力の絞り込みを完了したドイツ代表はイタリア北部で合宿を続け、8日にレバークーゼンで最後のテストマッチとなるサウジアラビア代表戦を戦った後、ロシアに向かう。オーストリア戦後に「やるべきことは多い」と不満をあらわにした指揮官は、危機感をうまく利用してチームに適度な緊張感を保ったまま大会に臨むはずだ。難敵メキシコ代表との初戦までにどれほどの修正力を見せるのか楽しみな一方、もし2週間後にも精彩を欠いたままであるようなら、その時はいよいよ世界王者に黄信号が灯ったと考えるべきかもしれない。
 
著者:マリオ・カワタ

ドイツ在住のフットボールトライブライター。Twitter:@Mario_GCC

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