それは香川真司だ。彼は間違いなく現在の代表チームのなかでトップクラスの技術と経験を持っている。そしていくつかの試合で決定的な仕事をこなせる力もある。しかし彼は決してバーサティルな選手ではない。ガーナ戦でもそれは垣間見えた。3-4-2-1の左シャドーで後半からプレーした香川は、ほとんどの時間を中央でプレー。3-4-1-2にシフトして彼の本職であるトップ下を務めた時に最も力を発揮した。しかしその後4-4-2にシフトして左サイドにポジションを移し手からは効果的な働きができなかった。彼の起用はもろ刃の剣になりかねない。彼の能力を最大限に引き出すのであれば“香川システム”をひねり出す必要があるだろう。
まず全力を傾けるべきはグループリーグの初戦だ。そしてその相手であるコロンビアはグループリーグで対戦する国の中で、西野監督が会見でしきりに示した「対応力」や「たくさんの可能性」を最も持っているチームだと言っていいかもしれない。知将ホセ・ぺケルマンに2012年から率いられているチームは、その分様々なシステム、戦術を持ち、今年3月末には今回大会の優勝候補のひとつであるフランス相手に見事な“対応力”を見せて、0-2から3-2の鮮やかな逆転勝利を収めた。
日本の強みのひとつとして対応の早さを西野監督は上げただけに、その対応力を最大限に活かすための基本的なルールと戦術を、残りの2週間で落とし込めるかがキーになる。次のテストは日本時間6月9日に行われるスイス戦だ。メンバーが確定し選手たちもより一丸となってW杯を目指す雰囲気が生まれるはずなので、そこでどのような可能性を示してくれるか楽しみである。
著者:土屋一平
フットボール・トライブ編集長。通称ペペ。
Twitter:@PPDOLPHINS
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