既にセリエAやブンデスリーガなど各国で試験運用されているVARだが、Jリーグでも導入するべきと考えられる理由は主に3つある。
まずは冒頭で紹介した例だけでなく、得点や試合結果に直結する判定のミスが今季も相次いでいる事だ。先月31日の鹿島アントラーズ対コンサドーレ札幌戦では、MF三好康児の決定的なシュートがゴール前でDF昌子源の手に当たりブロックされたが、ファールの笛はなし。また同日の川崎フロンターレ対サンフレッチェ広島戦で終了間際に川崎の同点ゴールが取り消されたシーンも、実際にはオフサイドではなかった。これらはいずれも試合の勝敗を左右する判定であり、VARが導入されていれば異なる判断が下されていた可能性は高い。
勝ち点1、得失点差1の違いで優勝や降格が決まる可能性を考えても、これはシビアに捉えられるべき事実だ。選手の質と同様に、レフェリーの質でも日本と欧州のトップリーグの間には差がある。世界トップレベルのレフェリーに比べてミスが多くなるのはある意味で当然だが、それならVARを使う意義はサッカー大国のリーグよりも大きい。
2つ目の理由は、これまでにもJリーグでは同様の誤審がありながら、その判定に対して公に活発な議論がなされることは少なかったという点だ。例えば欧州のサッカー先進国であれば、これらのシーンは繰り返しメディアで取り上げられはっきりと誤りが指摘されたことだろう。それによりレフェリーは正当にパフォーマンスを評価され、ファンのサッカーを見る目も養われることになる。
しかし日本では審判の判定を批評する文化がなく、「疑惑の判定」として評価はうやむやのまま終わってしまう。これも審判によるミスが繰り返される要因のひとつなのではないだろうか。その点で誤審を減らすと同時に正しい判定について公に議論するきっかけを与えるVARは、日本のサッカー文化に向いている。
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