3月22日に日本サッカー協会(JFA)はロシアワールドカップ(W杯)でも導入が決定している「ビデオ・アシスタント・レフェリー」(VAR)についてのメディア向け説明会を行った。この説明会ではサッカーの審判界で世界的権威として知られるDavid Ellerray氏(国際サッカー評議会(IFAB)テクニカルダイレクター兼イングランドサッカー協会(FA)審判委員長)がプレゼンテーションを担当している。
1. VAR導入の背景
VARの導入は、「なぜ、サッカーだけが試合を左右する状況で下す意思決定や判定に、テクノロジーを用いないのか?」という疑問から検討された。「試合の流れ」というサッカーにおける大事な部分を犯してしまうのではないかという懸念が多くあったが、2年という歳月の間に、理論的なところから導入まで事を運ぶに至っている。
2. VARの目的
VARが目指しているのは100%正しいジャッジを下すということではない。明らかで疑いようのないエラー(ミス)をなくすという点と、見逃されてしまった深刻な事象を正すという点にある。疑いようのないエラーの定義は「ほぼすべての人がミスジャッジとすぐにわかるもの」見逃された深刻な事象は、「主審が見ていないところで行われた暴力行為」などが該当する。細かいプレーすべてに介入するわけではなく、「最小限の介入で最大限の成果を上げる」というフィロソフィーのもと運用されていく。
3. VARの原則
VARは原則として主審が最終決定を下す。「PKかどうか判断できないので、きちんとリプレイ映像を見たい」など審判にその主導権があるのだ。また、プレーの見直しについても主審が判断を下す。速度よりも精度が重要なため、確認に時間的なプレッシャーが与えられることはない。ビデオ・アシスタント・レフェリーがビデオ・レフェリーという名前では無いのはそのため。あくまで主審をサポートする立場なのだ。
4. VARが適用される場面
適用される場面はVARからプレーの見直しのアドバイスを受け、プレーの見直しを主審が決断した場合と、主審自信が深刻なものを見逃したという疑いを持った場合の2つとなる。この際、主審は試合をきちんと止めるために、耳に指をあてる動作を行い、続いてテレビの画面を宙に描く動作を行う。見直しが終わった際には再びテレビの画面を宙に描く動作を行い、プレーを再開させる。選手たちを納得させるためにピッチ上で画面を確認するということも行われる。
耳に指をあてる動作 写真提供:Getty Images
テレビの画面を宙に描く動作 写真提供:Getty Images
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