しかし、割り当てられた試合の前にそうした分析を行うのは、マテウ・ラオスだけではない。いくつかのクラブも同じことをするのだ。「彼はスペインの他の審判とは大きく違うので、準備の仕方も変えるんだ」とアルメリアのフェルナンド・ソリアーノが以前語った。彼のセレブさには触れずに。
ソリアーノが意味するところは、マテウ・ラオスは大多数のスペインの審判とは違った方法で、ファウルを判定するということだ。彼のスタイルは、試合の流れを重視するイングランドのスタイルに似ていると言われている。『アス』のアルフレド・レラーニョ氏は、スペインには大多数の審判がするレフェリングと、マテウ・ラオスがするレフェリングの、2つの異なる方法があるとし「彼は違った形で存在感を示すのが好きで、頻繁にその状況を、必要以上に劇的なものにする」と続けた。あてになるかは別として、リーガ・エスパニョーラは審判による合理的な要求が、より一貫性を持つリーグである。そのためマテウ・ラオスの名前が担当主審の欄に書かれていた時点で、選手たちはいつもと違った試合になることを悟るのだ。
しかし彼のイングランド流のレフェリングは、行き過ぎているかもしれない。彼がリーガ・エスパニョーラで笛を吹き始めた2008年、マテウ・ラオスはキャリアを素晴らしい出来でスタートさせた。ジョゼ・モウリーニ監督でさえ彼のことを「素晴らしく、いい哲学を持った審判」だと評価した。それはイングランド流を過剰に取り入れて、大げさなファウルを無視するようになる前の彼だ。それにも関わらず危険なタックルを見逃して、平均的な審判よりもボールのないところでのプレーに対して警告し、イエローカードを多く提示している。スペイン人ジャーナリストのダニエル・ブランコ氏は、少し誇張気味に「彼は笛を吹く回数よりも提示するカードの方が多い」と話す。当たらずといえども遠からずだ。
最近マテウ・ラオスが才能を失ったことは明らかだが、2015年にパリを襲ったテロの当日、スタッド・ド・フランスのピッチの中央にいたのが、彼だったことは覚えておくべきだろう。ラオスはフランス代表対ドイツ代表の親善マッチでの経験が、彼を深刻に悩ませたことを認めている。そしてその経験がもとで、彼が毎試合違った形でピッチへ向かうのだと考えるのは、理にかなっているだろう。
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