セリエA アタランタ

ガスペリーニ特別インタビュー。知将が語る監督哲学からデータ活用法まで

データ提供サービス会社のWyscoutが行ったアタランタのジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督へのインタビュー。監督というポジションに対する考え方やチームマネージメントについて、そしてどのようにデータを活用しているのかについてイタリアの知将が語った。(翻訳者:土屋一平)

Wyscout(以下WS):コーチとしてのキャリアのスタートについての話から始めましょう。この職業にはどのように就くのでしょうか?

ジャン・ピエロ・ガスペリーニ(以下GPG):決まった道筋はありません。ユースカテゴリーからスターすることもできます。ファーストチームにおいても、低いカテゴリーからでも高いカテゴリーからでもスタートできます。コーチの歴史はとても多様です。何人かはまっすぐ駆け上がってゆき、また何人かはいくつものステップを経て成功します。私にとってはユースカテゴリーはとても良いトレーニングの場です。

WS:コーチになるために必要なステップはありますか?

GPG:ユースカテゴリーにおいてもファーストチームにおいても伝達能力が基本だと感じています。アイディアとトレーニングを選手たちに伝え、フォーメーションの中で能力を引き出すのです。

WS:伝達能力についてお聞きします。自分のプレーモデルをチームに落とし込むか、選手の個性に合わせる必要はありますか?

GPG:あなたが持っているものから始めるべきだと思います。コーチが選手に何かを加えられるとは思いません。そうではなく選手の能力を最大限引き出すのです。私たちは普通の選手を偉大な選手に替えられると思ってはいけません。なぜなら最高の成功は彼らの個性を最大限引き出すことにあるからです。これを行うにはあなたと共通する何かを持っている人物と一緒に仕事をすることが重要です。そしてフォーメーションを形成する25人の選手たちのためにこのプロセスを繰り返します。これには、戦術をベースに成功した監督もいれば、コミュニケーションをベースに成功した監督がいます。

WS:そこには唯一の方法などなく、むしろその反対ということですね。

GPG:全く異なるメソッドで成功したコーチの例があります。何人かはピッチ上で多くのトレーニングを行い、また何人かは違った側面を重要視します。重要なことはピッチ上で表現されるものをチームに落とし込み、それを確立することです。なぜなら最終的にすべてのことは一つの事実によって測られるからです。それはつまり結果であり、コーチの良し悪しはこの一点で決定されます。たとえそれを好きでないとしても、大会で優勝することだけでなく、チームにポジティブな雰囲気を作り出すことが、自分の目標を達成するうえでの最大の成功だと信じています。結果は必ずしもあなたにとっての勝利ではなく、最も価値あるものは成長です。目標は高すぎず低すぎないものを設定しなければいけません。そうしないと常に失望にさいなまれる危険があります。サッカーを愛する私たちのような人間にとって、コーチをすることで満足感を得られることは最高の感覚です。あなたの気分を重くさせるものではいけないのです。努力自体は満足できるものです。チームスピリットを作り上げることがとても重要なのです。

WS:あなたにとって「チーム」とは何ですか?

GPG:私にとって、誰もが同じ考えを持ち利他的で、可能性に満ちていて共に結果を出したいと望む雰囲気が大切です。しかし、フットボール界には闘いや言い争いがあったとしても結果を出しているチームもあります。フットボールの多様性です。特定の行動は特定の状況ではうまく作用しますが、他の人達とはうまくいかないものです。コーチが意思決定を行い、それ自体が批判と焦りの対象になります。親や先生のようなものです。そしてプロの世界では経済的利益も考えなえればなりません。経営、公衆、メディアとの関係です。状況は極めて複雑で「これがあなたのやり方です」と言い切ることはできません。結果は様々な道筋を通って達成されているのです。

WS:この変化しやすいサッカーというスポーツは、評価基準を設けるのが最も難しいシステムのひとつです。

GPG:全てのものをコントロールすることはできないので、私はピッチ上でプロ意識を重視する傾向にあります。単に他のことはコントロールできないからなのですが、その部分に関しては影響力を持つことができると感じています。しかし、これは私の気質なのです。私はこの側面にあまり重きを置かずに結果を出すコーチがうらやましいですよ。元々、私はより技術的です。たとえ残りの部分の重要性に気が付いていても、ピッチに避難するのです。それゆえ、私の注意はピッチ上で起こりえる技術的、運動能力的、または姿勢の問題に集中されます。その一方で私は意図的に他の側面には注意を払いません。

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