セリエA アタランタ

ガスペリーニ特別インタビュー。知将が語る監督哲学からデータ活用法まで

アタランタのジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督 写真提供:Getty Images

WS:データについて話しましょう。Wyscoutのプラットフォームでランキングツールを使用し、アタランタとボルシア・ドルトムントのそれぞれの大会における価値を分析しました。この結果はUEFAヨーロッパリーグの次の対戦に向けた興味深い準備方法になるかもしれません。

GPG:それらは試合を形成するのに便利な数字です。例えば正確なパスによって彼らがブンデスリーガの首位に立っているのであれば、それはいい指摘だと言えるでしょう。つまり彼らは技術的な質の高いチームだということです。枠内シュートの数字を見ればフィニッシュの局面で非常に危険だということ知れます。個人の数字を見れば、その選手がほかの選手に比べて2点目を決める可能性が高いことを理解することもできます。基本的には私はビデオで試合の準備をする方を好みます。数字から対策を立てるのは難しく感じますし、特定の場合それを解釈する必要もあります。

WS:あなたは相手に合わせたプレーを選択することが多いですか?それとも自分たちのスタイルを貫きますか?

GPG:これは個性です。相手、自分のチームの選手たち、結果、あなたが満足しているか否かといった多くの要因に依存します。引き分けに満足しますか?勝ちたいですか?勝ったとして、どのように優位性を維持しますか?幾度となく、チームが問題を抱えていたため選手交代をして状況を変えたいと思いました。そして交代する前に失点しました。そしてもし交代できていれば失点しなかっただろうかと考えました。しかしそれは起こるのです。経験です。その次のステップはどのように包囲すればいいのかわからないエネルギーをコントロールすることだと言えます。アタランタで例えると…

WS:ぜひ聞かせてください。

GPG:去年、私たちはセリエAで37ポイントを獲得して4位につけていました。私たちの内部にはエネルギーがあったので、多くのゴールチャンスを与えて負けたかもしれない試合にも勝つことができました。しかし何か重いものを感じていたのです。どのようにそれを示せるでしょうか?その時、チームを包んでいたのは本当に強い感情だったために勝ち続けていました。しかしビデオを観返してみると危険な場面があったのです。それらは「幸運」とか「不運」と呼ばれるものですが、どのようにそれらの要因を計測するのでしょうか?インテルとローマは数週間前まで首位争いをしていましたが、彼らは何かを失い失速しました。多くのチームにこのようなことが起こります。そして1ヶ月で10ポイントを失うのです。どのように解決してどのように管理するのですか?スタッツやビデオ以外の要素も未だに存在しているのです。

WS:雰囲気の問題でしょうか。

GPG:私はポジティブな雰囲気の重要性を心から信じています。もう一つの例です。サン・シーロで勝ち点が同じACミランと試合をします。彼らは順位に失望していて私たちは満足しています。勝ち点は同じですが視点が変わります。これらは他の構成要素ですが、コントロールできるものではないので、私は戦術に労力をつぎ込みます。また、迷信もあります。狂気的にならないためにもすべての類の迷信から自分自身を遠ざけています。私はピッチ上の出来事を信じているのです。チームのコミュニケーションにおいて言葉は重要ではありません。視覚が重要なのです。ビジュアル・コミュニケーションは基本です。一目見れば味方選手がどのように私に向かってパスをするのか理解できます。これは時間とともに成熟する「阿吽の呼吸」であり、最初からできるものではありません。一緒にプレーすることで、その選手がボールを置く位置や欲しいタイミングがわかるようになるのです。そしてそれらの要素は試合を決定づけるかもしれません。だからそれは技術的なものだと言え、それゆえに私は大好きなのです。

Wyscout
イタリアのジェノバ近郊に本拠地を置くデータ提供サービス会社。欧州や南米のほぼすべての主要クラブが契約しており、主要リーグに所属する選手だけでなく、小国リーグのデーターも提供している。

ジャン・ピエロ・ガスペリーニ
アタランタの監督。現役時代はパレルモやペスカーラでプレー。監督転身後はディエゴ・ミリートやティアゴ・モッタを有したジェノアで、トレードマークの3‐4‐3システムをベースにした攻撃的なサッカーを展開し、UEFAヨーロッパリーグ出場権を獲得した。その後インテル、パレルモなどで指揮を執り、2016年からアタランタの監督に就任し今シーズンはチームをEL決勝トーナメントへ導いた。

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