プレミアリーグ チェルシー

チェルシーに染み付いたコンテ色。クラブと補強方針の不一致も…

著者:Richard Jolly

英紙『ESPN』、『The Guardian』、『The Blizzard』などに寄稿する英国人ジャーナリスト。

皮肉なことだが…チェルシーは補強に不満を持っているであろうアントニオ・コンテ監督に感謝をしなければならないだろう。来夏は新しいCBやFWではなく、新たな監督を見つけなければならない事態は避けるべきだ。

彼らは多くのターゲットを逃した。レオナルド・ボヌッチ、ロメル・ルカク、ラジャ・ナインゴラン、アレックス・サンドロ、フィルジル・ファン・ダイク、カイル・ウォーカー…もし(来夏に)コンテが満足出来る補強が行われなかった場合、詩的正義として退任を考えるだろう。

今後、コンテは移籍市場での動きを把握することを求めるはずだ。近年のチェルシーはあまりに多くの選手にサインしたが、クラブに残ったのは数少ない選手のみ。

しかし、昨夏にクラブは十分な補強をせず、その事実をコンテ監督は聞かされていなかった。

元チェルシーの指揮官ラファエル・ベニテス監督はクラブの補強方針についてかつてこのようにコメントしている。

「私はソファーを購入することを希望していたが、彼らは私にランプを購入してくれた」

当時と現在ではクラブの状況が異なるかもしれない。だが、チェルシーはコンテにソファーを購入したが、彼はソファーを要求していなかった。

そして、実際に新品が到着すると、家具を並べ替えるときに問題が生じる。コンテは”組み立てられたソファー”が市場のトップターゲットではないし、高価でも高品質でもないと主張したはずだ。

コンテが率いるチームはセンターバックとウィングバック、守備的ミッドフィルダーとターゲットマンが戦術の背骨となる。

幅広いエリアをカバーできる3人のCBとボール奪取力に優れた破壊的なMF、そして空中戦に特徴を持つストライカー。このスカッドこそが「3-4-2-1」でプレーしたいマネージャーに適したものだ。

コンテは昨季の序盤戦(6週間)で創造性、適応性、組織力の面で再構成するための時間を要していたが、最終的にはリーグ優勝を果たしている。

コンテはマウリツィオ・サッリ、ディエゴ・シメオネ、ルイス・エンリケ、カルロ・アンチェロッティ、トーマス・トゥヘル、ブレンダン・ロジャーズのようにシステムとスタイルを持ちながらも、選手の潜在的な能力を発揮できる監督と言えるだろう。

現在のチェルシーはプレミアの覇権を争うジョゼップ・グアルディオラやユルゲン・クロップ、マウリシオ・ポチェッティーノらに適したチームではないはずだ。

コンテは「現有戦力が出来ること」すぐさま特定し、昨季優勝に導いた。

明確なのは、チェルシーの選手たちは高い位置からのプレッシングに適していないということ。シメオネの4-4-2やクロップのコンパクトな4-3-3、またはグアルディオラのウインガーの幅を広く取った攻撃は当然機能しない。

セスク・ファブレガスはベストパサーだがスピードは最も遅い。マルコス・アロンソとビクター・モーゼスはウイングバックとして最盛期を迎えているが、前者はスピード不足、後者は守備面での不安を抱えている。アンドレアス・クリステンセンはダビド・ルイスに代わりサプライズな活躍を見せたが、他のビッククラブが優先して使うレベルには達していないだろう。

そんな十分ではない戦力の中うまくやりくりを見せているのだ。

チェルシーは指揮官の移り変わりが激しいクラブだが、長期的なビジョン、予算が無制限であるというビジネス感覚をコンテと妥協しあうことが必要だろう。

現在のスカッドはすでにコンテ創り上げた”コンテ・スタイル”に適したメンバーとなっており、たとえ退任したとしても、そのスタイルはしばらく消えず、留任すればさらに色濃いものとなるはずだ。