プレミアリーグ チェルシー

やはり今季のマンCはプレミア優勝の本命なのか。2年目突入で浸透するペップの魔術【Match STORY】

 マンチェスター・シティにとって痛すぎる事件が起きた。プレミアリーグ第7節チェルシーとの大一番を2日後に控えた現地時間28日、アルゼンチン代表FWセルヒオ・アグエロが交通事故に遭い肋骨を折る重傷を負ってしまった。幸いにも長期的な離脱には至らず、2週間から4週間で復帰できることがシティのメディカルスタッフの診察により判明した。フランス代表DFバンジャマン・メンディも負傷離脱しているシティにとっては短期間の離脱でさえ大きな痛手であることに変わりはないだろう。

 今季のシティは新戦力としてイングランド代表DFカイル・ウォーカー、メンディなどサイドバックとして屈指の実力を誇る選手を獲得。3-5-2のシステムを採用し、2トップにアグエロとブラジル代表FWガブリエル・ジェズスを起用。攻守の両面でパワーアップし、リーグで首位に立っていた。しかし、大事なピースであるアグエロとメンディがケガにより離脱とシステムの変更を余儀なくされた。そんな、チームの状態で監督のジョゼップ・グアルディオラ氏が採用したシステムは4-1-4-1だった。シティ就任1年目に良く用いていたシステムだ。

 グアルディオラ氏はバルセロナを指揮していた時代から4-1-4-1のシステムを高いレベルで実行してきた。SBの選手が中盤の内側に絞り、MFのようにプレーする「偽サイドバック」などが特徴的で前線に多くの選手を送り込みポジションを流動的に入れ替えながらプレーする。ボールを保持した際にいかに数的有利な状態を作り出し、崩し切るかという考えが根底にある戦術だ。

 しかし、この戦術にもデメリットがある。ポジションを流動的に激しく入れ替えるのでボールを奪われた際にポジションがずれ、ディフェンスにスムーズに移行できなくなる恐れが生まれてしまうのだ。しかし、チェルシー戦でそのような心配をする必要はなかった。激しいポジションチェンジを繰り返した選手たちは、それぞれの役割をしっかり理解し奪われた際には素早くファーストディフェンス。アンカーや、内に絞っていたSBの選手などが素早くカバーリングに回りチェルシーの選手にボールをもって前を向かせないことを徹底していた。

 それでも、ベルギー代表MFアザールなど世界トップクラスの選手にボールが渡ると前を向かれてしまう。するとシティは攻撃を遅らせるディフェンスに移行する。ブロック体系を組みなおし相手に攻撃の人数をかけさせ、高い集中力でチェルシーの攻撃をはじき返し続けた。そして、ボールを奪ったら即ちカウンターでチェルシーゴールに牙をむいていた。そして0-0で迎えた67分、ベルギー代表MFケビン・デ・ブライネ、スペイン代表MFダビド・シルバ、ジェズスのコンビネーションでチェルシーからゴールを奪った。その後、最後までリードを守り切り1-0で敵地でのチェルシー戦を勝利で終えた。

 アグエロ不在でのチェルシー戦という難局をシステムの変更で乗り切ったシティ。グアルディオラの手腕も言わずもがなであるが、選手たちの“戦術理解度”の高さが存分に発揮された試合だった。この難局を乗り越えた今、シティの勢いを止められるチームは出てくるのだろうか。