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川島永嗣を超えられない。ハリル・ジャパン起用法で露呈したJリーグの“GK育成問題”

川島永嗣を超えられないJリーグの“GK育成問題”

著者:チアゴ・ボンテンポ
1985年生まれのブラジル人ジャーナリスト。サンパウロ在住。幼少期よりスポーツとりわけサッカーを愛する。大学時代にジャーナリズムを専攻し2011年よりブラジル『Globo Esporte』で日本サッカーを担当している。ブラジルのボタフォゴ、アーセナル、そして日本代表の熱烈なサポーターである。将来の夢は日本語を流暢に扱うこと、富士山登頂、Jリーグスタジアムを巡ること。
Twitter: @GunnerTNB

 現状ヨーロッパで成功を収める日本人GKは川島永嗣しかいない。2010年のワールドカップ以降、川島はヨーロッパのクラブを渡り歩く中で、うまくいくこともそうでないこともあった。その中でも彼が特に注目を集めたのはベルギー時代だろう。彼のキャリアピークはスタンダール・リエージュ所属の2013-2014シーズンで、47試合に先発出場し、22試合のクリーンシート、失点もわすが35失点のみという成績を残した。だが、2014年以降はそううまくはいかなかった。クラブチームでも、代表チームでもミスを繰り返し、どちらのポジションも失うことになったのだ。

 2015年7月に川島はスタンダール・リエージュを退団し、スコットランドのダンディー・ユナイテッドに加入するまで無所属で半年を過ごしている。当時32歳だった彼にとってはその後の将来を見据える意味でも、決して好ましい状況ではなかった。移籍先のスコットランドでの彼はファンに受け入れられないことに苦しみ、スコティッシュ・プレミアリーグの降格圏内に沈むチームを救うこともできなかった。それだけでなく、川島は代表チームでのポジションまでも失うことになった。当時、Jリーグで活躍する多くのGKたちが彼のポジションを奪うだけの好パフォーマンスを披露していただけに、それはサムライブルーにおける彼の時代の終焉を告げるようなものであるかにも思えた。

 日本代表GK川島の代役として、名乗りを上げたのは、2012年から2016年まで5年連続でJ1の「ベストイレブン」に選出されていた西川周作だった。日本代表のバヒト・ハリルホジッチ監督は正GKをまだ決めかねていると口にしていたが、重要な試合で起用されるのは浦和レッドダイヤモンズの西川だった。しかしながら、西川はハリルホジッチ監督の信頼をつかみ取るだけの十分なパフォーマンスを代表チームで見せることができなかった。極めて重要な3月のワールドカップ・アジア最終予選のUAE戦でハリルホジッチ監督が川島にラストチャンスを与えたことには誰もが驚いた。フランスでの所属チームFCメスで出場機会に恵まれていなかったにも関わらず、ハリルホジッチ監督は彼の豊富な経験を評価し、西川ではなく、彼を信頼したのだ。

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