Jリーグ

J2全クラブ監督通信簿&続投可能性【2025シーズン総括】

増田功作監督(左)吉田謙監督(中)倉石圭二監督(右)写真:Getty Images

史上空前の大激戦となった2025シーズンのJ2リーグ。全日程が終了し、優勝した水戸ホーリーホックと2位のV・ファーレン長崎が来季のJ1昇格を決めた。

残る昇格枠「1」を巡っては、3位〜6位によるJ1昇格プレーオフ(準決勝12月7日、決勝13日)を控えている。3位と4位には準決勝で「引き分けでも決勝進出」というアドバンテージが与えられているものの、何が起きてもおかしくないのが一発勝負のプレーオフ。昇格争いは最後の最後まで緊張感を保ったまま続いていく。

その裏で、各クラブはすでに来季へ向けた準備を進めている。昇格・降格を経験したクラブはもちろん、シーズンの結果が問われるクラブでも監督人事の判断が迫られている状況だ。ここでは、全J2クラブの指揮官の評価と続投可否を整理し、ストーブリーグの焦点となる監督人事を深掘りしていく。


柴田慎吾監督 写真:Getty Images

北海道コンサドーレ札幌:柴田慎吾監督

評価:★★☆☆☆/続投可能性:0%

11月29日、サガン鳥栖(2022〜2024途中)を率いていた川井健太氏の次期監督就任が報じられた札幌。2025シーズンは1年でのJ1復帰を掲げて岩政大樹監督を招聘したものの、11位にまで低迷し、8月11日に監督交代に踏み切った。後任の柴田慎吾監督はクラブOBでまだ40歳。同クラブの育成組織を長年、指導してきたが、Proライセンスを取得したのは2023年で、これがトップチーム初采配。さすがに「ここからチームを立て直してプレーオフ進出を」という注文は少々酷なミッションだった。

序盤にはJ3降格圏にまで沈んでいたことを思えば、最終的にJ2残留を果たした点は評価すべきだろう。一方で課題は明確で、リーグワースト2位の失点数に加え、ホームの大和ハウスプレミストドームでの弱さが際立った。守備の立て直しは急務である。柴田監督自身は別の形でクラブに残る見通しで、来季は新体制による再出発を図ることになる。


吉田謙監督 写真:Getty Images

ブラウブリッツ秋田:吉田謙監督

評価:★★☆☆☆/続投可能性:100%

開幕2連勝の後、4連敗を喫し、一時は降格圏まで沈んだ秋田。その後も1桁順位に上がることなく、2025シーズンを終えた。吉田謙監督にとって今季は6シーズン目となるが、J3で優勝した2020年以降、J2では一度も1桁順位でフィニッシュしたことがない。それでも、独特のボキャブラリーで“語録”を残し、日めくりカレンダー「まいにち吉田語録」が公式グッズとして発売されるなど、サポーターからの根強い支持を得ている。

一方で、新スタジアム計画はなかなか前に進んでいない。資金的に大型補強は難しい状況だが、契約更新した来季は昇格プレーオフ進出(6位以上)を目標に据え、吉田監督の集大成が問われるシーズンとなるだろう。


森山佳郎監督 写真:Getty Images

ベガルタ仙台:森山佳郎監督

評価:★★★☆☆/続投可能性:100%

仙台は最終節いわきFC戦(0-1/ユアテックスタジアム仙台)でのまさかの敗戦により、前節の6位からプレーオフ圏外の7位に滑り落ち、2年連続のJ1昇格プレーオフ進出を逃した。課題だった決定力不足が影響した形となったが、森山佳郎監督が作り上げたチームは、しぶとく勝ち点を拾うスタイルを貫き、敗戦数は昇格した長崎に次ぐ8敗タイで、連敗もなく安定感を示した。特にカウンターを封じる守備の連動性が光った。

森山監督は就任初年度の2024年からチームを立て直しており、若手とベテランの融合という点でも評価に値する。渡邉晋元監督(2015-2019)退任以降、仙台は監督交代が続いてきたため、森山監督の去就も不透明だったが、12月2日に続投が発表された。3季目へ向け、チームの課題や不足点を慎重に検証する必要があるだろう。


横内昭展監督 写真:Getty Images

モンテディオ山形:横内昭展監督

評価:★★☆☆☆/続投可能性:100%

10月27日に契約を更新し、続投が決まっている横内昭展監督。渡邉晋前監督の解任に伴い、2025シーズン途中の6月に就任した。降格圏に近い15位だったチームを立て直し、最終的には10位に押し上げた。

横内監督は1995年にサンフレッチェ広島で現役を引退。引退後は広島のスタッフとして育成年代やトップチームのコーチを歴任し、2017年には、森保一監督が途中退任した際に、ヤン・ヨンソン監督就任までの暫定監督を務めた。その後はJFA(日本サッカー協会)に派遣され年代別代表のコーチとして経験を積み、ジュビロ磐田の監督(2023-2024)を経て山形へ招聘された。

しかし、就任1年目の今季は一度も1桁順位に届かず、得点・失点ともに多く、連敗癖も抜けない不安定なシーズンとなった。コミュニケーション能力や選手からの信頼構築は横内監督の強みだが、磐田時代のようにJ1昇格へ導く成果は果たせず。それでもチームビルディング能力が評価され、2年目の指揮を託されることになった。ファンからの期待も高く、来季は序盤からの采配で真価が問われることになるだろう。


いわきFC 写真:Getty Images

いわきFC:田村雄三監督

評価:★★★★☆/続投可能性:70%

2015年に「一般社団法人いわきスポーツクラブ」の運営を引き継ぐ形で創設されて以来、監督や強化・スカウト本部長、スポーツディレクターなど様々な役職を通じ、クラブの発展を見続けてきた田村雄三監督。もはやクラブの歴史そのものと言っても過言ではない。福島県3部リーグから7年連続昇格でJ2にまで上り詰めたが、近3シーズンはやや足踏み状態にある印象だ。それでも、昇格プレーオフ進出まであと一歩という成長を見せており、新スタジアム建設が形となったことも、新たなモチベーションにつながるだろう。

田村監督はフィジカルを鍛え上げ、強度の高いプレスと素早い攻撃を信条とする「いわきスタイル」を浸透させてきた。攻撃的なサッカーが花開き、得点数は前年を上回った。シーズン途中にエースのFW谷村海那が横浜F・マリノスへ移籍したものの、得点力の低下は見られず、若手選手の成長も促された。ファンの支持も厚く、来季の昇格争いへの期待が高まるチームと言える。


森直樹監督 写真:Getty Images

水戸ホーリーホック:森直樹監督

評価:★★★★★/続投可能性:90%

森直樹監督は水戸のみならず、J2の歴史に残る指揮官と言える。その采配でチームは初優勝と自動昇格を果たし、J2在籍26シーズンで初のJ1昇格を決めた。相手によって3バックと4バックを使い分ける戦術家としての顔を持ち、紳士的な佇まいの一方で、自軍の得点シーンでは感情を露わにし雄叫びを上げる激情家の一面も併せ持つ。リーグ屈指の守備力を誇り、失点数は最少クラスで、セットプレーの精度も高い。攻撃面ではMFの創造性が光り、多様な得点パターンを生み出した。

2025シーズン開幕からの連勝が象徴するように、一貫したパフォーマンスが昇格の原動力となった。唯一の課題は終盤の集中力切れだが、全体としては完璧に近いシーズンを送った。若手中心のチームをまとめ、J1での戦いも視野に入れた戦術を構築している。

引き抜きがなければJ1でも指揮を執る可能性が高く、サポーターからの支持も厚い。トランジションの鋭さを武器に、守備の組織力はJ1でも通用するだろう。補強では、J1でも通用する身体能力の高いアタッカーをターゲットにする見込みだ。まずはJ1残留が目標となるが、「水戸の奇跡」はJリーグ史に確かに刻まれた。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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