ワールドカップ

W杯本戦出場を果たした小国の挑戦者たち

カーボベルデ代表 ロベルト・ロペス(左)デロイ・ドゥアルテ(右)写真:Getty Images

アフリカ西岸の小さな島国・カーボベルデが、2026年FIFAワールドカップ(北中米大会)のアフリカ予選を突破し、史上初となる本大会出場を決めた。人口およそ52万人の国が、ついに世界の大舞台に立つ。

W杯の歴史を振り返ると、カーボベルデのように小国ながらも世界の強豪に挑んだ国々が存在する。ここでは、かつてW杯の舞台に立った“小さな挑戦者たち”の歩みを紹介する。


パナマ代表 写真:Getty Images

パナマ(2018年:ロシア大会)

パナマは北アメリカ大陸と南アメリカ大陸の境に位置する共和制国家で、2018年のロシア大会で初めてW杯本大会への出場を果たした。それまで10回の予選に挑みながら、あと一歩のところで涙を飲み続けてきたパナマ。2014年ブラジル大会予選では、最終節の終盤にアメリカに逆転負けを喫し、出場権を逃している。

それから4年後、北中米カリブ海予選で再びチャンスを掴んだパナマは、最終節でコスタリカを下して悲願の本大会出場を決めた。この歴史的快挙を祝し、出場が決まった翌日の10月11日は国民の祝日とされた。

ロシア大会ではグループGに入り、ベルギー、イングランド、チュニジアと対戦。初戦はベルギー相手に前半を無失点で凌いだものの、後半に崩され0-3で敗戦。続くイングランド戦では、前半だけで5失点を喫するなど守備が崩壊し1-6で敗れたが、DFフェリペ・バロイが決めた1点がパナマにとってW杯での初ゴールとなった。

最終戦はチュニジアと戦い、先制点を奪いながらも1-2と逆転負けを喫したが、パナマはこの3試合を全力で戦い抜き、その姿勢は国内外で高く評価された。その後もパナマ代表は継続的に強化を続け、2026年大会でも再び本大会出場を目指している。


W杯1974年西ドイツ大会 ハイチ対アルゼンチン 写真:Getty Images

ハイチ(1974年:西ドイツ大会)

ハイチはカリブ海に浮かぶ島国で、イスパニョーラ島の西部に位置する共和制国家である。1974年の西ドイツ大会で同国は初めてW杯の舞台に立った。

当時のハイチでは、国内リーグがまだ完全なプロ体制として整備されておらず、選手の多くは国内クラブでプレーする準プロ的な立場にあった。それでも、1973年に地元で開催されたCONCACAF選手権では、トリニダード・トバゴなどを下して優勝。総合成績でメキシコを上回り、見事に1974年大会への出場権を掴んだ。

本大会ではイタリア、アルゼンチン、ポーランドという強豪ぞろいの厳しいグループに入ったハイチ。初戦のイタリア戦では、46分にハイチのFWエマニュエル・サノンが先制点を挙げ、イタリアのGKディノ・ゾフが保持していた無失点記録(1,142分)を止めた。試合はその後逆転されて1-3で敗れたものの、この一瞬の輝きはハイチサッカー史に深く刻まれた。

残る2試合は、ポーランドに0-7、アルゼンチンに1-4と大差で敗れたが、ハイチにとって初のW杯出場は、今なお語り継がれる歴史的な出来事となっている。


W杯1974年西ドイツ大会 ザイール対ブラジル 写真:Getty Images

ザイール(1974年:西ドイツ大会)

アフリカ中部に位置するザイール(現・コンゴ民主共和国)は1974年の西ドイツ大会で、サハラ砂漠以南のアフリカ諸国(サブサハラ・アフリカ)として初めてW杯本大会への出場を果たした。

しかし、大会期間中、チームはボーナスや報酬の未払いという問題に直面。さらに、当時のモブツ・セセ・セコ大統領からは、試合結果に応じた帰国条件の制約が課されていたと報じられ、政治的な圧力が選手たちの精神面に大きな影響を与えたとされる。

グループリーグ初戦ではスコットランドに0-2で敗れ、続くユーゴスラビア戦では0-9の大敗。最終戦でもブラジルに0-3で敗れ、3戦全敗・無得点という結果に終わった。

それでも、ザイールの挑戦は「限られた資源と困難な環境の中でも、サッカーを通じて国の名を世界に刻むことができる」と示した象徴的な出来事だった。チームが直面した政治的圧力や待遇問題は、敗北の背景にあったが、彼らが示した「アフリカもW杯に立てる」という事実は、その後のアフリカ勢の飛躍につながっていく。1990年大会でベスト8に進出したカメルーン、2002年大会で初出場ながらベスト8入りを果たしたセネガルなど、後に続いたアフリカ諸国の躍進の礎にはザイールの存在があった。

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名前:Nao
趣味:サッカー観戦、お酒、子供が所属するサッカークラブの応援
2023年からライターとしての活動を始めました。プライベートでは3人の男児の父親、個人ブログ「FootballAnalysis」を運営しています。サッカーがある日常、特に試合がある日の街の風景やスタジアム周辺の雰囲気が大好きです。多くの人にサッカーの楽しさを知って頂ける記事を書いていきたいと思います。よろしくお願いします!

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