Jリーグ

なぜ?カップ戦で躍進もリーグ戦で沈むクラブの実例と背景【Jリーグ】

湘南ベルマーレ(左)柏レイソル(右)写真:Getty Images

明治安田Jリーグでは、YBCルヴァンカップ(以下、ルヴァン杯)や天皇杯全日本サッカー選手権大会(以下、天皇杯)のカップ戦で輝かしい成績を収めながら、翌年のリーグ戦では苦戦を強いられるクラブが珍しくない。その背景には、大会方式の違いや戦力の変動、過密日程などさまざまな要因があると考えられる。

ここでは、過去にカップ戦で躍進した翌年にリーグ戦で低迷したクラブを取り上げ、その要因を探っていく。


大分トリニータ サポーター 写真:Getty Images

大分トリニータ(2008年)

2008年、大分トリニータはナビスコカップ(現ルヴァン杯)を制覇した。当時19歳のMF金崎夢生(現ヴェルスパ大分)ら若手の台頭に加え、FW高松大樹(2000-2016)やFWウェズレイ(2008-2009)ら攻撃陣の活躍、シャムスカ監督の戦術が融合し、九州のクラブとして初となるビッグタイトルを手にした。

しかし翌2009年、大分は一転してリーグ戦で大失速。主力の負傷や過密日程の影響、選手層の薄さが露呈し、最終的には18チーム中17位でシーズンを終えJ2降格が決定。わずか1年前に栄光を手にしたクラブが、最短ルートで転落するという劇的な結末を迎えた。この結果は、Jリーグ史上「カップ戦制覇の翌年に降格」という唯一の事例となっている。


湘南ベルマーレ 写真:Getty Images

湘南ベルマーレ(2018年)

2018年、湘南ベルマーレはルヴァン杯を制し、ベルマーレ平塚時代の1994年天皇杯以来となるタイトルを獲得した。MF杉岡大暉(現柏レイソル)が大会MVPとなる活躍を見せ、曺貴裁監督(現京都サンガ監督)のアグレッシブな戦術が結実した瞬間だった。

しかし翌2019年の湘南は、序盤こそ健闘を見せたものの夏以降は失速。戦術の迷走や曺監督のパワハラ問題などクラブを取り巻くトラブルも重なり、チームは大きく揺れ動いた。また、シーズン途中の監督交代も安定感を欠く要因となり、勝ち点を伸ばせないまま残留争いに巻き込まれた。

この年の湘南は最終的に16位に沈み、J1参入プレーオフに回ることとなった。徳島ヴォルティスとの一戦を引き分けで終え辛うじてJ1残留を果たしたものの、前年のカップ戦制覇の華やかさとは対照的に、苦しい一年を強いられた。


柏レイソル 写真:Getty Images

柏レイソル(2012年)

2012年度の天皇杯を制した柏レイソルは、クラブにとって貴重な国内主要カップ戦のタイトルを獲得した。2011年にJ1初優勝を成し遂げてからわずか1年後の快挙であり、当時のネルシーニョ監督下で構築された攻撃的かつ堅実なスタイルが結果として結実したシーズンでもあった。

特にMFレアンドロ・ドミンゲス(2010-2014)やMFジョルジ・ワグネル(2011-2013)、FW田中順也(2009-2014)らが躍動し、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場権を手にするなど、クラブは全国的な注目を集めた。

しかし翌2013年は状況が一変。リーグ戦では序盤から勝ち点を積み上げられず、上位争いに加わることができなかった。過密日程や主力選手のコンディション不良、さらには対戦相手の徹底した対策も影響し、勝ち切れない試合が続いた結果、最終順位は10位に終わった。タイトルホルダーとしては物足りない成績で、リーグ戦における停滞感が色濃く残るシーズンとなった。

一方で、カップ戦では勝負強さを発揮。2013年のヤマザキナビスコカップ(現ルヴァン杯)では粘り強い戦いを続け、見事頂点にたどり着いた。このタイトルは、2011年のJ1優勝、2012年の天皇杯制覇に続くもので、柏が「大会ごとに勝ち進む力」を持つクラブであることを示した。リーグ戦で苦しみながらもカップ戦で成功を収めるという独特のシーズンは、柏の多面的な強さと課題を同時に映し出した。

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名前:Nao
趣味:サッカー観戦、お酒、子供が所属するサッカークラブの応援
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