
3月26日、JリーグYBCルヴァンカップ(ルヴァン杯)1回戦の13試合が行われ、J3のSC相模原は、ホームの相模原GIONスタジアムにJ1清水エスパルスを迎えた。1-3で破れ、2回戦進出はならなかった。平日18時キックオフというサラリーマンにとってはなかなかシビアな時間だったものの、清水サポーターが数多く来場したこともあり、3,993人の観客動員数を記録した。
相模原ギオンスタジアムの収容人数は約1万5,300人と公表されている。メインスタンド(個席)2,823人、バックスタンド(ベンチシート)3,492人、ホーム側南サイドスタンド(芝生席)4,519人、アウェイ側北サイドスタンド(芝生席)4,466人となっており、座って観戦できる実数は6,315人(車椅子席は除く)。1998年に開催された国体のラグビー会場を改装し竣工されたのが2007年4月で、2008年に設立された同クラブより前だったことから、Jリーグの試合が開催されることを想定されていなかった。そのため「イス席が最低1万人」とするJ2クラブライセンス基準を満たしていない。
そこでSC相模原は、WEリーグ「ノジマステラ神奈川相模原」、ジャパンラグビーリーグワン「三菱重工相模原ダイナボアーズ」、アメリカンフットボールXリーグ1部「ノジマ相模原ライズ」と共同で、JR相模原駅北口の駅前に、J1クラブライセンス基準を満たした新スタジアム計画を提案。J2クラブライセンスの例外規定(5年以内のスタジアムの新設)を受けている。
新スタジアム建設計画については、相模原市に対しても多くのパブリックコメントが寄せられているが、市側は「検討」という表現に留め、決して前向きでないことを伺わせる。水戸ホーリーホックやブラウブリッツ秋田、清水などの事例から、過熱気味の新スタジアムブームに逆風が吹き始めていることで、この計画自体の実現性も不透明となっている。

アクセスに問題がある相模原ギオンスタジアム
現在の相模原ギオンスタジアムも外観はキレイで、陸上トラックがある割には観戦しやすく、ピッチ状態も良好だ。2018年までナイター施設すらなかったことを考えれば、J3を戦う分には「これで十分」という印象を受ける。
ただこのスタジアム、非常にアクセスに問題があるのだ。駐車場は十分に用意されているのだが、車で行こうとすれば東名道や圏央道のICから向かうにしても渋滞は避けられず、電車で行こうにも最寄り駅はJR相模線の原当麻駅で、そこから登り坂を20分以上歩かされる。
沿線の住民には失礼であることは承知の上だが、ラッシュ時でも1時間に4本、夜ともなれば1時間に2本程度の運行しかない「相模線」と聞くだけで“遠くて不便”という印象を与え、東京都内や横浜、川崎のみならず、相模原市中心部に住む住民にとっても足が向きにくいのではないだろうか。
現実的なアクセス方法は、小田急線相模大野駅からバスに乗る方法だが、直行便ではなく路線バスだ(前売り券の販売状況次第では臨時直行便があるらしいのだが、この日はなかった)。しかも終バスの時間は20時25分。仮に試合が延長戦に突入していたら、相模大野経由で来たファンは途中で帰るか路頭に迷うかの二択を迫られるところだった。この事実だけで、クラブの運営担当は来場者の帰りの足のことなど考えていないことが良く分かる。
三菱重工相模原ダイナボアーズがラグビーリーグワン2023/24シーズン開幕戦の花園近鉄ライナーズ戦(2023年12月9日)において「1万人プロジェクト」を企画し、10,681枚の前売りチケットが発券されたものの、実際の来場者は7,852人に留まり、プロジェクトは失敗に終わった。その理由が駐車場の不足と、輸送バスの不足にあったと分析したにも関わらず、その問題点をSC相模原と共有することはなかったのではないか。
町田GIONスタジアムの成功例
ここで、同じく「株式会社ギオン」がスタジアムのネーミングライツを取得しているJ1町田ゼルビアの本拠地・町田GIONスタジアムを例に取りたい。“天空の城”の異名通り、森に包まれた山あいにあり、最寄り駅である小田急線鶴川駅からは徒歩で何と60分かかる。
しかし、JR横浜線・小田急線町田駅、京王線・小田急線多摩センター駅、JR横浜線淵野辺駅、東急田園都市線南町田グランベリーパーク駅から直行バスを運行し、しかも無料で観光バスだ。これをJ2時代から続けているからこそサポーターを呼び込むことに成功している。
その結果としてJ1初昇格となった昨2024シーズン、平均1万328人が来場し、クラブ史上最多を記録したのだが、強いだけではお客さんは来てくれないことを理解したオペレーションを根気強く続けた賜物ともいえる。SC相模原が本気で集客に力を入れるのであれば、まずはこのあたりから改革が必要だろう。
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