Jリーグ

J1全クラブ監督の通信簿&続投可能性

写真:Getty Images

2024シーズン明治安田J1リーグも残り2節。優勝は首位のヴィッセル神戸と2位のサンフレッチェ広島に絞られたが、一方の残留争いもサガン鳥栖しか決まっておらず混戦模様だ。

しかし陰では、各クラブが来2025シーズンへ向けて動き出している。ここでは監督人事にフォーカスし、既に始まっているシーズンオフの動きについて深堀りしたい。


ミハイロ・ペトロヴィッチ監督 写真:Getty Images

北海道コンサドーレ札幌:ミハイロ・ペトロヴィッチ監督

評価:★☆☆☆☆/続投可能性:0%

2018年に就任以来7シーズンに渡って北海道コンサドーレ札幌の指揮官を務め、いきなりクラブ最高成績の4位、翌2019年にはルヴァン杯準Vなど、クラブをJ1に定着させただけでなく、高みに上らせたミハイロ・ペトロヴィッチ監督。

しかし今2024シーズン札幌は、35節終了時点で19位と、J2降格が現実味を帯びている。今季開幕戦をスコアレスドローで終えた後、5連敗を喫し、開幕ダッシュに失敗したこと、エースのFW鈴木武蔵がスランプに陥り、得点力不足に悩まされたことが響いた。

既にシーズン途中の5月に「集大成」として、今シーズン限りの退任を宣言しているとあって、2022年に就任した三上大勝代表取締役GMが、次期監督に誰を選ぶのかが焦点となっている。

来季、J2で戦うと仮定すると、J未経験の外国人監督を招聘するのはリスクが伴う。しかし、前任の四方田修平監督は横浜FCでチームを昇格に導こうとしていることから、現在フリーの日本人監督となろう。候補となるのは、今季栃木SCのヘッドコーチを途中解任されたものの、かつて札幌を指揮(2004-2006)し、J2経験も豊富な柳下正明氏あたりとなるのではないだろうか。


中後雅喜監督 写真:Getty Images

鹿島アントラーズ:中後雅喜監督

評価:★★★★☆/続投可能性:60%

過去、大分トリニータ(2009)、町田ゼルビア(2011、2020/22)、FC東京(2012/13)、セレッソ大阪(2014)を指揮したランコ・ポポヴィッチ監督を招聘して2024シーズンに臨みながらも10月に解任し、ヘッドコーチを務めていた中後雅喜氏を監督に昇格させ、同時にコーチに羽田憲司氏、本山雅志氏、フットボールダイレクターに中田浩二氏を就任させる新体制を発表した鹿島アントラーズ。

中後監督初戦となった第34節(10月19日)のホーム(カシマサッカースタジアム)アビスパ福岡戦でスコアレスドローの船出はサポーターを不安にさせたが、次戦第35節(11月1日)の敵地(Uvanceとどろきスタジアム)の川崎フロンターレ戦で3-1の快勝を収め、来季のACLエリート出場権も十分に狙える状況だ。 

しかし、中後監督の来季は保証されてはいない。川崎フロンターレの鬼木達監督の今季限りでの退任が10月16日に発表されると、すぐさまオファーを出したと報じられたのだ。それでも鹿島は優勝争い、川崎はACLエリートを戦っている最中のこの報道は、眉に唾を付けて受け取る必要がありそうだ。そもそも、鹿島が新体制を発表した際、小泉文明社長は「中長期的な視点に立った強化戦略」と語ったはず。そこに鬼木氏にオファーを出したとなれば、「あの言葉は何だったのか」と言われても仕方あるまい。


マチェイ・スコルジャ監督 写真:Getty Images

浦和レッズ:マチェイ・スコルジャ監督

評価:★★☆☆☆/続投可能性:50%

ノルウェー人指揮官、ペア=マティアス・ヘグモ氏を招聘して臨んだ今2024シーズンだったが、8月25日時点で勝ち点35の13位と低迷し、同27日ヘグモ監督解任と、2023シーズンに浦和を指揮しACL優勝に導いたマチェイ・スコルジャ監督の復帰という“ウルトラC人事”に舵を切った浦和レッズ。

しかし、スコルジャ監督復帰後もチームの状態は上向かず、第31節のFC東京戦から第34節の東京ヴェルディ戦まで4連敗を喫するなど、第35節終了時点でJ1残留を決められないでいる。

成績不振に陥る度、監督交代を繰り返し、クビにした監督を呼び戻すことも一度や二度ではない浦和フロント(横山謙三氏、ホルガー・オジェック氏、堀孝史氏、大槻毅氏)。再びスコルジャ監督を切る可能性も高いだろう。

母国のポーランドでは、レギア・ワルシャワやレフ・ポズナンといった欧州CLにも出場経験のある名門クラブの監督を務めてきたスコルジャ監督。帰国したとしても次の仕事に困ることはなさそうだが、浦和はまたしても“監督ガチャ”を強いられ、迷走することになりそうだ。


井原正巳監督 写真:Getty Images

柏レイソル:井原正巳監督

評価:★☆☆☆☆/続投可能性:20%

2023年5月に辞任したネルシーニョ前監督の後を受け、ヘッドコーチから昇格した柏レイソルの井原正巳監督。同シーズンは、リーグ戦17位に終わりながらも降格枠「1」というレギュレーションに助けられ、天皇杯準Vという結果を残したことから続投となった。

しかし今季は開幕から低空飛行を続け、35節終了時点で、降格ラインの18位ジュビロ磐田との勝ち点差はわずか「4」。夏から解任説が浮上しては消える状況だったが、なんとか延命していた。その裏には井原監督を解任しようにも、内部昇格となれば柏OBでもあるヘッドコーチの栗澤僚一氏、コーチの大谷秀和氏、染谷悠太氏に白羽の矢が立つのだが、経験が絶対的に不足しているという事情もあるだろう。

いずれにせよ、井原監督の続投の可能性は低いとみる。次期監督に話を移せば、ネルシーニョ監督の再々登板は、74歳という年齢からも難しいだろう。新たな外国人監督を探すか、栗澤ヘッドの昇格か、あるいはかつて京都サンガ(2017/18)を率いた経験のある布部陽功GMの現場復帰という可能性もある。


ピーター・クラモフスキー監督 写真:Getty Images

FC東京:ピーター・クラモフスキー監督

評価:★★☆☆☆/続投可能性:10%

2018年、横浜F・マリノスの監督に就任したアンジェ・ポステコグルー監督(現トッテナム・ホットスパー)のヘッドコーチとして来日したピーター・クラモフスキー監督。

2020年、自身初の監督として清水エスパルスに入団するもJ1残留ギリギリの17位に低迷し1年で退任。2021年、J2モンテディオ山形の監督に就任したが、2023シーズン開幕2連勝の後の5連敗で解任。時を同じくしてアルベル・プッチ・オルトネダ監督を解任したFC東京の監督の座に収まる。

こうして見ると、監督としての能力以前にタイミングに恵まれた印象だ。2023シーズン11位という結果でクラモフスキー監督続投を決めたフロントにガッカリした東京サポーターも多かったはず。案の定、今季開幕ダッシュにも失敗し、中位あたりをウロウロしながらシーズンを終わろうとしている。サポーターから「フロントは本当に優勝する気があるのか」と言われても仕方のない人事だ。

既に今季限りでアビスパ福岡監督を退任する長谷部茂利氏にアプローチしているという噂がある。福岡が“エレベータークラブ”から脱し、タイトルまでもたらした長谷部監督ならば、若く勢いにある若手の多いFC東京をもう一段上にまで引き上げ、上位進出のみならず久しぶりのタイトル奪取も夢ではないだろう。

Previous
ページ 1 / 4

名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ、現在のお気に入りはシャビ・アロンソ率いるバイヤー・レバークーゼン

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

筆者記事一覧