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【J2天王山】清水エスパルスvs横浜FC戦レビュー。優勝争いは持ち越しに

ユーリ・ララ(左)乾貴士(右)写真:Getty Images

9月28日、明治安田J2リーグの首位攻防戦、清水エスパルスvs横浜FCの試合が行われ、国立競技場に5万5598人の大観衆を集めた。両チームとも譲らず1-1の引き分けに終わり、優勝争いは次節以降に持ち越される結果となった。

首位でこの試合を迎えた清水は、ここ7試合負けなし(6勝1分け)。2位の横浜FCは14試合負けなし。その勝ち点差はわずか「1」とあって、優勝争いを決定付ける“6ポイントマッチ”として注目された大一番。加えてJ1昇格が確実となった両チームにとっては、来季も見据えた“クラブの現在地”を確認できる試合でもある。

清水は、前節の藤枝MYFC戦(9月22日3-2)で4か月ぶりに出場し1得点1アシストの活躍を見せたMF西澤健太が、2試合連続の先発出場。完敗した前回対戦(5月18日0-2)以降故障に苦しんだ日々を送ったとあって、この一戦への思い入れは人一倍強かったはずだ。さらに、夏の補強で町田ゼルビアから育成型期限付き移籍で加入しリーグ後半戦の“ラッキーボーイ”として存在感を示しているMF宇野禅斗も、先発に名を連ねた。

一方の横浜FCは、MFユーリ・ララが出場停止明けで中盤の要としてスタメン復帰。前節の大分トリニータ戦(9月21日1-1)では途中出場だったFWジョアン・パウロも先発に復帰し、現状のベストメンバーで、この大一番に臨んだ。


ジョアン・パウロ 写真:Getty Images

ジリジリとした展開の前半、横浜が先制

試合は前半立ち上がりからジリジリとした展開で、両チームとも決定機を作れないまま時間だけが進む。見せ場は前半24分の横浜FCのパウロ、前半31分の清水のFWルーカス・ブラガのシュートシーンくらいだったが、ともに枠外。中盤での奪い合いによって度々試合が止まり、この日主審を務めた西村雄一氏の統一感のない判定も相まって、両チームのサポーターにとってはストレスが溜まる内容だった。

先に動いたのは清水の秋葉忠宏監督。後半10分、ブラガに替え、控えに甘んじていたFWカルリーニョス・ジュニオを投入する。

しかし、スコアを動かしたのは横浜FC。この直後の後半11分、MF中野嘉大のクロスにFW高橋利樹が頭で合わせ、このシュートがクロスバーで跳ね返されたこぼれ球にパウロが反応し、GK権田修一の壁を破った。

先制された清水は後半23分、秋葉采配としては珍しく3枚替えを敢行。MF矢島慎也、MF宮本航汰、DF北爪健吾をピッチに送り込み、フォーメーションも3バックに変更し反撃を仕掛ける。

対する横浜の四方田修平監督は、同時にFW伊藤翔とFWカプリーニを投入。守りに入る姿勢を見せず、徐々に試合はオープンな展開となる。


清水エスパルス 写真:Getty Images

清水MF矢島の推進力から同点へ

清水にとっては“負けパターン”に陥る流れだったが、ここで存在感を見せたのが矢島だ。浦和ユース育ちで年代別代表でも活躍した上で、トップチームに昇格しながらも通算5シーズンで23試合2得点と結果を残すことができず、その後5クラブ(ファジアーノ岡山、ガンバ大阪、ベガルタ仙台、大宮アルディージャ、レノファ山口)を渡り歩いた苦労人だ。

後半29分、カルリーニョス・ジュニオからのパスを受け、持ち前の推進力でペナルティーエリア前に侵入し、ゴール前に詰めていたDF原輝綺にラストパス。原のシュートはGK市川暉記にセーブされるが、そのこぼれ球に反応した宮本がゴールに押し込み、同点に追いついた。その宮本も、この大一番で宇野にスタメンの座を奪われた悔しさを、得点という形で晴らした格好だ。

その後、四方田監督は、後半33分にFW櫻川ソロモン、FW村田透馬を投入。FW登録の選手を前線に4人並べ、あくまで「勝ち点3」にこだわる。

清水も5バック気味に構え、横浜のクロスを跳ね返し続ける。後半45分にDF山原怜音に代わって投入されたDF高木践も守備面の強度のみならず、ボールを持つと相手陣地にドリブルで侵入しこの日フル出場のMF乾貴士とのワンツーを試みるなど、短時間ながらも新たな一面を見せた。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ、現在のお気に入りはシャビ・アロンソ率いるバイヤー・レバークーゼン

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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