
2026年1月1日、国立競技場の呼称が「MUFGスタジアム」に変わった。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が、運営会社であるジャパンナショナルスタジアム・エンターテイメント(JNSE)との間で命名権契約を締結。期間は2030年末までの5年間で、契約金額は非公表だが、関係者によると総額100億円程度(年間約20億円)とされ、国内の命名権契約として史上最高規模と報じられている。正式名称は「国立競技場」のまま、略称は「MUFG国立」だ。
国立競技場はコンセッション方式による民営化で、NTTドコモを代表企業とし、前田建設工業、SMFLみらいパートナーズ、Jリーグの4社が参画するJNSEが2025年4月から30年間の運営を担っている。この命名権導入は、収益化を求められる民営化の一環だ。
広告ではなく「共創」の起点
MUFGの亀澤宏規グループCEOは2025年10月の発表会見で、「世界レベルのナショナルスタジアムを目指す『KOKURITSU NEXTプロジェクト』に共感した。ここに参加し、我々が持つ繋ぐ力を活かして価値を高めていきたい」と積極的な運営参画を強調した。
JNSEとMUFGが結んだ「ナショナルスタジアムパートナー」契約は、命名権取得を主眼とせず、スタジアムを起点とした社会価値の共創を目的としている。MUFGは金融ネットワークや技術を投入し、スタジアムを「社会の心臓」として進化させる構想を掲げる。
狙い1:15万人の社員を動かす、パーパス浸透の仕掛け
MUFGが繰り返し強調するのは、2021年に定めたパーパス「世界が進むチカラになる」の社内浸透と、15万人超の社員の行動変容だ。大規模組織でパーパスを共有するのは難しく、広告露出だけでは意識は変わらない。国立競技場という国民的象徴を活用し、社員がプロジェクトに参加したりイベントを通じて実感したりする機会を創出する。
命名権はその「きっかけ」であり、目的は社員一人ひとりがパーパスを行動で体現することにある。MUFG公式サイトでも「グループ15万人の社員が志と覚悟、そして責任をもって、多くの皆さまに親しまれ、共感いただけるスタジアム実現に向けて取り組む」と記載されている。
狙い2:スタジアムを起点に、新事業を共創する
MUFGはこの契約を「KOKURITSU NEXTプロジェクト」の起点と捉え、スタートアップ育成、先端技術実証、地域活性化を推進する。具体的には、金融リテラシー教育、次世代育成プログラム、ICTを活用したスマートスタジアム化(人流データ分析など)をJNSEと共同展開。MUFGの強みである「繋がり」を生かし、産官学の多様なステークホルダーと連携したイノベーションを目指す。
なお、MUFGのエンブレムに採用された「ハーモニー・オーバル」も調和と循環を象徴し、パーパスを視覚化したものだ。スタジアムツアーの名称も「MUFGスタジアムツアー」に変更され、共感の連鎖を広げる手段として位置づけられている。
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