プレミアリーグ

プレミアリーグ監督解任コストランキング!補償金最多クラブはチェルシー

チェルシー 写真:アフロスポーツ

Jリーグと比べても、欧州サッカー界では監督交代がはるかに頻繁に行われている。中でも「解任」の場合、クラブは契約期間が残っていれば給与を支払い続ける義務があり、その補償金がクラブ財政に大きな負担となる。さらに他クラブから監督を引き抜く場合には、前所属クラブへの契約解除金(いわゆる移籍金)が発生することもあり、数億円規模の出費に発展するケースも珍しくない。

特にイングランドのプレミアリーグでは、放映権料の高騰や投資ファンドの参入によって資金力が膨らむ一方、結果を求めるプレッシャーも強く、監督解任に伴うコストが年々増大している。ここでは1992年のリーグ創設以降に支払われた監督解任補償金の総額を基に、プレミアリーグで最も多くの“解任コスト”を負担してきたクラブをランキング形式で紹介し、その背景とクラブ経営への影響を探る。


監督解任補償金ランキング

以下のクラブは、名門ゆえにサポーターやメディアからのプレッシャーも強く、監督交代を頻繁に行ってきた。一方で、監督を変えることが必ずしも成績向上につながらないケースも多く、結果として巨額の解任コストを負担してきたクラブも少なくない。

このランキングは、1992年から2026年2月までに支払われた監督解任時の補償金総額を基に、プレミアリーグの上位5クラブをまとめたものだ(1ポンド=210円で計算)。

1:チェルシー(解任18回)
約1億6,160万ポンド(約339億3,600万円/平均約18億8,580万円)

2:トッテナム・ホットスパー(解任14回)
約6,650万ポンド(約139億6,500万円/平均約9億9,750万円)

3:マンチェスター・ユナイテッド(解任6回)
約6,203万ポンド(約130億2,630万円/平均約21億7,105万円)

4:リバプール(解任6回)
約5,080万ポンド(約106億6,800万円/平均約17億7,800万円)

5:アーセナル(解任4回)
約2,930万ポンド(約61億5,300万円/平均約15億3,825万円)

算出例として、チェルシーの場合、2018年にアントニオ・コンテ監督(現ナポリ監督)を解任した際、約2,660万ポンド(約56億円)の補償金を支払ったとされる。これは主に契約期間中に残っていた給与の補償分によるものだ。コンテ監督は2016年にチェルシーの指揮官に就任し、初年度でプレミアリーグ優勝を達成。しかし2017-18シーズン終了後、成績不振などを理由に2018年7月に解任された。

ランキングを見ると、チェルシーが突出した補償金総額を記録していることが分かる。次項では、同クラブが“欧州屈指の解任コストクラブ”と呼ばれる理由を見ていく。


チェルシー:欧州最多の“解任コスト”クラブ

チェルシーは1992年以降、プレミアリーグで最も多くの監督解任補償金を支払ってきたクラブだ。総額1億6,160万ポンドという金額は、18回に及ぶ監督解任の積み重ねによるもの。背景には、2003年に実業家ロマン・アブラモビッチ氏がクラブを買収して以降、短期間で結果を求めるクラブ方針があったとされる。

代表的な例が、ジョゼ・モウリーニョ監督(2004-2007、2013-2015)の2度の解任だ。2007年の1回目の退任時には約2,310万ポンド(約48億5,000万円)、2015年の2回目の退任時には約830万ポンド(約17億円)が支払われたと報じられている。モウリーニョ監督はチェルシーを3度のプレミアリーグ優勝(2004/05、2005/06、2014/15)に導いたが、2度目の政権では2015/16シーズン途中に成績低迷でクラブを去ることになった。

近年でも解任に伴うコストは続いている。2022年にはトーマス・トゥヘル監督の解任に際し、約1,500万ポンド(約31億円)の補償金が発生したとされる。さらに2026年1月のエンツォ・マレスカ監督解任では約500万ポンド(約10億円)の支払い義務が発生したと報じられているが、マレスカ氏がその一部または全額を放棄した可能性も伝えられている。

こうした解任補償金はクラブの損益計算書では「特別損益」として処理されることが多く、欧州サッカー連盟(UEFA)が定めるファイナンシャルフェアプレー(FFP)にも影響を与える可能性がある。巨額の資金力を誇るチェルシーにとっても、監督交代のコストは無視できない経営課題となっている。


トッテナム:頻繁な監督交代の代償

トッテナム・ホットスパーは総額6,650万ポンドでワースト2位。監督解任は14回に及び、補償金の平均額は比較的低いものの、交代回数の多さが目立つ。2001年から約25年間会長を務め、2025年9月に退任したダニエル・レヴィ前会長の厳しい経営方針が背景にあるとされる。レヴィ体制下では短期間で結果を求める傾向が強く、現在も“監督交代の多いクラブ”という体質は大きく変わっていない。

象徴的な例が2026年2月のトーマス・フランク監督解任だ。トッテナムはアンジェ・ポステコグルー前監督を契約途中で退任させた後、ブレントフォードからフランク監督を約1,000万ポンド(約21億円)の契約解除金で招へい。しかしリーグ戦で結果が出ず、約650万ポンド(約13億5,000万円)の給与と約800万ポンド(約16億8,000万円)の解任補償金を合わせ、総額1,450万ポンド(約30億3,000万円)のコストが発生したと報じられている。

過去にも、2021/22シーズンに就任したヌーノ・エスピリト・サント監督がわずか10試合で解任され、約1,400万ポンド(約27億円)の補償金が支払われたとされる。トッテナムは欧州CL(UEFAチャンピオンズリーグ)出場を目標に掲げてきたが、近年はリーグ戦で苦戦が続き、監督交代の連鎖が成績にも影響を与えている。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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