
「この景色を忘れてはいけない」
試合後、早実のMF野川主将は自分たちの戦い方をこう振り返った。「前にボールを供給してセカンドボールを拾い、2人目、3人目と関わってゴールに近づけることが自分たちのサッカーです。自然と空中戦が増えるのはチームとして承知していましたが、そこで相手にセカンドボールを多く拾われてしまい、カウンターを許すきっかけになってしまいました」。
勝負を分けたポイントについて問われると、「ハーフタイムの時点では1点差だったので、1点入れば(流れが)変わると思っていました。それで前がかりになりすぎてしまい、余計なファールが多くなってしまいました。フリーキックからの2失点目で、ゲームの流れが大きく変わってしまったと思います」と2失点目の重さを強調した。
また、目標として掲げていた“全国1勝”をつかむために必要なことについては「チーム全体が勝利に対してもっともっと貪欲にならないといけないと思いましたし、正直、選手権だけ頑張れば勝てるほど簡単な大会ではないと思っています。新チームが始まった時点から全ての公式戦で熱量をフルに出して目の前の試合に勝ちきる、この積み重ねが結果として選手権で勝ちきる強さになると思います。こういう舞台では、勝ちへの貪欲さが必要になってくると思います」と述べ、厳しい言葉で自身とチームを見つめ直した。
一方で、試合終了間際に霜田が挙げた全国初ゴールについては「2年前は無得点に終わってしまいましたが、今大会で1点を決めることが出来たことは大きな一歩だったと思います。間違いなく未来に繋がるゴールですし、無得点で終わるのと1点獲得して終わるのでは意味合いが違ってきます。応援してくれている人たちにとっても大きいゴールだったのではと思います。ゴールが決まって観客席が盛り上がった景色は2年前には無かったので、このチームで得点を取れたのは、後輩たちや早実を応援してくれる人たちのためにもなったと思います」と確かな手応えも口にした。
しかし「勝てなかったことは負の財産だと思っています」とも語り、勝利で歴史を塗り替えられなかった悔しさをにじませた。
試合後のミーティングで下級生に「絶対にこの気持ちや景色を忘れてはいけない」と伝えたという野川。「新しい代では今日出場した2年生を中心に、メンバー外の部員やこれから入って来る新入部員にも、この敗戦から学んだことを活かして次の選手権では勝ってほしい」と、自身が成し遂げられなかった夢の続きを後輩たちに託した。

「己との戦いだった」
中学時代に所属していたベガルタ仙台ジュニアユースから、当時まだ全国大会への出場経験がなかった早稲田実業学校へ進んだ野川。名門Jクラブの下部組織から環境が大きく変わったことで、戸惑いも少なくなかったという。
「早実では、チーム内での競争がなかなか生まれにくかったです。だからこそ、己との戦いだなと思っていました。自分がやらないと個人も成長しないですし、チームも成長しない。かといって自分と同じレベルの選手が真横にいるのかと言われるとそうではなかったので、常に自分にベクトルを向け続けないとチームのためにも自分のためにもならないと、この3年間で感じました」。
競争環境に頼るのではなく、自身を律し続けることで成長を求めてきた野川。その姿勢は主将としてチームを牽引する原動力となった。卒業後は早稲田大学へ進学し、サッカーを続ける。大学でも「常に自分の軸を持ち続けながら愚直に取り組んでいきたい」と話しており、早実で培った愚直さを武器にプロサッカー選手を目指す。
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