
J2降格という厳しい結果に直面した湘南ベルマーレを巡り、親会社であるRIZAPグループとの資金関係が大きな波紋を広げている。発端は、湘南がRIZAP側に対して総額約6億円の資金を貸し付けていた事実が報じられたことだった。
12月5日、市民メディア『湘南ジャーナル』が第一報を伝え、9日には『文春オンライン』が詳細を報道。これを受けてRIZAPグループ株式会社は同日、公式サイトで声明を発表し、貸付の事実を認めた上で、その経緯や目的を説明した。声明では、貸付はクラブの余剰資金を一時的にグループ内で運用したものであり、利息収入によってクラブの利益にも寄与したと主張している。
しかし、子会社であるJリーグクラブが親会社に資金を貸し付けるという構図は極めて異例だ。この資金移動はサポーターや地域関係者に強い違和感を与え、「クラブの金庫が親会社の都合で使われたのではないか」という不信感を生んでいる。
ここでは、湘南ベルマーレによる6億円貸付問題を巡り、その経緯とRIZAP側の説明を整理し、この資金運用の是非を検証する。
貸付の事実とRIZAP側の説明
RIZAP側の声明によれば、2025年3月期において、当初計画していた約2億円の投資に加え、トレーニング環境整備やマーケティング支援といった現物支援を実施したという。また、2025年2月に湘南が債務超過に陥るリスクが生じた際には、J1クラブライセンスを維持するため、約8,000万円の追加投資を行ったとしている。
一方で問題視されたのが、同時期に行われていた親会社RIZAPへの貸付だ。声明では、クラブの一時的な余剰資金を活用し、グループ全体の資金効率を高める目的で実施したと説明されている。貸付は複数回に分けて行われ、いずれも翌月には全額返済され、利息も支払われたという。RIZAP側は「利息収入はクラブの利益として計上されている」とし、法令や会計基準に反するものではないと強調した。
形式上は短期貸付であり、帳簿上も利息付きの取引だ。しかし、総額約6億円という規模の大きさは看過できない。2億円の投資や8,000万円の追加支援を強調する一方で、それを上回る金額がクラブから親会社に流れていたように見えることが、批判を増幅させている。
電撃的な人事変更が招いたさらなる不信
この問題と前後して行われた人事変更も、騒動を大きくした要因の一つだ。11月、長年クラブを率いてきた真壁潔会長と、クラブOBでもある坂本紘司社長が退任し、RIZAPグループ幹部が新たに会長・社長に就任した。
RIZAP側は声明で、「J1復帰を目指すための経営体制刷新」と説明しているが、真壁氏は一部メディアの取材に対し、「突然本社に呼ばれ、降格の責任を取るよう求められた」と語っており、事実上の解任だった可能性を示唆している。
J2降格が決まった直後のタイミングで、親会社主導による電撃的な人事が行われたことは、サポーターにとって受け入れがたいものだった。貸付問題と重なったことで、「経営の実権が完全に親会社に移り、クラブの自主性が失われたのではないか」という疑念が強まった。
コメントランキング