Jリーグ

J2全クラブ監督通信簿&続投可能性【2025シーズン総括】

宮沢悠生監督 写真:Getty Images

RB大宮アルディージャ:宮沢悠生監督

評価:★★★★☆/続投可能性:90%

2024年、大宮がJ3に降格したタイミングで監督に就任した長澤徹前監督は、1年でのJ2復帰を果たしたものの、第26節から5戦未勝利となり、9月24日に解任された。後任には、レッドブル・ザルツブルクの育成組織で指導歴を積んだ宮沢悠生監督が抜擢された。宮沢監督はJFA Proライセンスに加え、UEFA Aライセンスも取得している。

親会社の意向が強く働いた人選であったため、「誰?」という反応があったほか、日本での実績がないこともサポーターに不安を与えた。しかし、就任初采配となった9月27日の第31節ジュビロ磐田戦(ヤマハスタジアム/4-3)で勝利を収めると、試合後に円陣を組み、選手とサポーターに向けて熱い言葉を残した。この勝利以降、チームは6勝1分け2敗と好成績を維持し、6位で昇格プレーオフの切符を手にした。就任後8試合で無得点試合はゼロ、11月9日の第36節では首位の水戸を敵地・ケーズデンキスタジアム水戸で撃破(2-0)してみせた。

ハイプレスを基調とした積極的なサッカーが定着し、総得点60、得失点差+21はいずれもリーグ2位を記録。惜しくも自動昇格は逃したが、プレーオフで重要なのは守備力よりも得点力であることが歴史が示している。財政面や人脈面でも、レッドブルグループの底力を見せたシーズンとなった。


大塚真司監督 写真:Getty Images

ヴァンフォーレ甲府:大塚真司監督

評価:★★☆☆☆/続投可能性:0%

11月14日、2025シーズン限りでの退任が発表された大塚真司監督。昨季14位、今季も13位という成績では致し方ないだろう。8月17日の第26節大分トリニータ戦(2-0/JITリサイクルインクスタジアム)以降、1勝3分け8敗と惨憺たる成績で、J2残留がやっとという結果に終わった。

2022年の天皇杯優勝や2023/24のACL出場も、もはや過去の栄光となった。今季最後の話題がチーム最年長45歳DF山本英臣の女性スキャンダルであった点も、残念ながらチームの成績とは無関係のネガティブ要素となった。

中盤のポゼッション不足やセットプレーの弱さが目立ち、攻撃のバリエーションも乏しい。チーム得点王がFW内藤大和の5得点では、新監督の人選以前に攻撃陣の補強が不可欠であり、来季も苦戦が予想されるだろう。


小林慶行監督 写真:Getty Images

ジェフユナイテッド市原・千葉:小林慶行監督

評価:★★★★☆/続投可能性:90%

2010年から実に16年ものJ2暮らしが続く千葉。小林慶行監督が就任した2023年には、リーグ6位で昇格プレーオフに進出した。昨季は7位で惜しくもプレーオフを逃したものの、2025シーズンは開幕6連勝で勢いに乗り、一時は首位に立った。だが、V・ファーレン長崎とジュビロ磐田に首位を譲り、自動昇格圏からは脱落した。最終節のFC今治戦(フクダ電子アリーナ)では5-0の大勝を収め、プレーオフ圏内を維持した。

連敗はわずか1度のみで、安定した戦いぶりが光る。攻守のバランスはリーグ随一で、優勝争いに食い込むポテンシャルを示した。クラブの黄金期を築いたイビチャ・オシム監督(2022年死去)時代(2003-2006)以降は監督交代が続き、監督代行を含めると16人が指揮を執った。クラブOBである小林監督は地元愛が強く、サポーターの心を掴み、昇格への道筋を描いた。

仮に昇格を逃したとしても続投の可能性は高い。一方で昇格を果たした場合、現有戦力ではJ1での戦いは苦戦が予想される。2桁得点者がFWカルリーニョス・ジュニオ1人だけでは心もとなく、決定力あるアタッカーの補強が必須となるだろう。


須藤大輔監督 写真:Getty Images

藤枝MYFC:須藤大輔監督

評価:★★☆☆☆/続投可能性:20%

“超攻撃的サッカー”を標榜する須藤大輔監督だが、2025シーズンは看板倒れの印象が否めなかった。藤枝は目標に掲げていた平均集客5,000人は達成し、クラブは着実に成長しているものの、J2残留を確定させたのは11月23日の第37節鳥栖戦(0-0/藤枝サッカー場)という薄氷の戦いによるもので、最終順位は15位に終わった。

2022年の就任初年度にはJ3で2位となり昇格に導いた実績がある須藤監督だが、就任4年目の今季は“マンネリ化”の兆しが見えた。サポーターからの支持は厚いものの、J3再降格を避けるためには、新監督を迎えて新たな風を吹き込むことも一つの選択肢だろう。また、報道によれば須藤監督には他のJ2クラブからのオファーも届いており、辞任の可能性もある。


安間貴義監督(FC東京所属時)写真:Getty Images

ジュビロ磐田:安間貴義監督

評価:★★★★☆/続投可能性:70%

2025シーズンから就任した安間貴義監督率いる磐田は、最終節のサガン鳥栖戦(駅前不動産スタジアム)で2-1の勝利を収め、5位に浮上。昇格プレーオフ進出を決めた。

安間監督のポゼッションサッカーは、かつての名門時代復活を予感させるもので、総得点59はリーグトップクラスだ。しかし守備面に綻びが目立ち、失点数は昇格クラブおよびプレーオフ進出クラブの中で最も多い51失点で、改善が必要だ。

現役時代はHonda FC(2002-2004)でプレーし、その後ヴァンフォーレ甲府(2008-2009)、カターレ富山(2010-2014)、FC東京(2017・2023)、FC岐阜(2021)などで指導経験を積んだ安間監督。就任後はチームの精神面を立て直したものの、5度の連敗で苦しい戦いを強いられた。磐田との直接的な接点は就任前になかったが、地元・浜松市出身であることもあり、サポーターからの支持は厚い。初年度からプレーオフに導いたことで契約延長の可能性は高いが、黄金時代の再現には安間監督の采配と戦力強化が鍵を握る。


安達亮監督 写真:Getty Images

カターレ富山:安達亮監督

評価:★☆☆☆☆/続投可能性:30%

5月27日に解任された小田切道治前監督(現奈良クラブ監督)の後任として、横浜F・マリノスのアシスタントコーチを辞し富山の監督に就任した安達亮監督。

就任後もチームは低空飛行を続け、降格圏の18位で迎えた最終節の秋田戦(富山県総合運動公園陸上競技場)では、4-1の大勝を収め、得失点差で熊本を上回り17位に浮上。奇跡的な残留劇を演じた。決め手となったのは、後半アディショナルタイムに高卒ルーキー18歳FW亀田歩夢が決めたJリーグ初ゴールだった。しかし、総得点34はリーグワーストクラスで、守備も安定せず、降格は免れたものの問題の多いシーズンとなった。

安達監督は現役時代に横浜フリューゲルスで選手兼アシスタントコーチを経験。引退後の1993年にはサテライトチームでゲルト・エンゲルス氏(現徳島ヴォルティスヘッドコーチ)の下で指導に携わった。その後は横浜F、横浜FM、鹿児島実業高校で育成年代の指導者を歴任。また、J2ヴィッセル神戸(2012-2014)やJFLラインメール青森(2021)でも指揮を執るなど、カテゴリーを問わず豊富な指導経験がある。

神戸時代は降格後も続投した経験があり、今回も来季指揮を任される可能性はゼロではないが、サポーターを失望させるリスクが高く、新監督を招いて再建を図る方が現実的と考えられる。


レノファ山口 写真:Getty Images

レノファ山口:中山元気監督

評価:★☆☆☆☆/続投可能性:0%

11月30日、退任が発表された中山元気監督。6月24日、志垣良前監督の解任に伴い、中国リーグ時代の2013年以来2度目の就任だった。地元・山口県下関市出身で期待されたものの、山口は第7節以降、一度も降格圏を脱出できず、最終的に19位で10年守り抜いたJ2から降格が決定した。最終節の大宮戦(維新みらいふスタジアム/3-2)では意地を見せたが、守備の乱れと攻撃の停滞が致命的だった。

来季はJ3で再建を目指すことになるが、現有戦力の維持に加えて新戦力の補強がなければ再昇格は困難だ。前回のJ3在籍時(2015年)は、クラブに勢いがあり、1年で優勝し昇格を果たした。しかし、J2で過ごした10年間で1桁順位は1度だけ(2018年8位)にとどまっており、再びJ3で力を蓄える必要があるだろう。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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