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J3高知ユナイテッド、“パワハラ不認定”でも鮮明になった運営の危うさ

Jリーグ 写真:Getty Images

再発防止策とその実効性

クラブが示した再発防止策には、以下が含まれる。

  • 内部・外部相談窓口の設置
  • 年5回の定期面談
  • 年2回の研修体制強化
  • 組織体制の見直し(ガバナンス強化)

これらは形式的には一定の改善を目指す内容だが、実効性をどう担保するかが鍵となる。相談窓口が形骸化すれば、通報は伏せられ続ける。研修や面談も “やらされモード” になれば意味が薄い。

また、根本的な問題として「契約不備」「未払い」「労働条件不明確」の是正には、単なる処罰だけではなく、継続的なチェックと透明性の確保が必要だ。


今後の展望:クラブとリーグの責任

今回のケースは、単に高知ユナイテッドの問題にとどまらない。Jリーグ拡大の流れの中で、新興クラブの “プロフェッショナル化” が追いついていない可能性を示唆している。

  • クラブの責任:高知ユナイテッドはガバナンス刷新だけでなく、雇用契約や労働条件を明文化し、運営をプロ仕様へ引き上げる必要がある。
  • Jリーグの責任:参入審査時のチェック項目に「雇用・労務管理」「労働環境の透明性」を強化すべきだ。単なる施設・観客数ではなく、運営の健全性を見極めるメカニズムが求められている。
  • ステークホルダー(自治体・スポンサー・ファン):クラブへの支援を続ける一方で、労務リスクに対するガバナンス強化を求める声を上げるべきだ。

結論:信頼回復への道は険しい

高知ユナイテッドの最新の内部調査報告は、「パワハラ不認定」という一見クラブに味方する結果を出した。しかし、その裏には深刻な雇用管理の欠如とコンプライアンスの不備が隠れていた。家族的経営が持つ温かさは、ときにガバナンスへの甘さを生み出しうる。

クラブが真に信頼を回復するためには、再発防止策を言葉だけで終わらせず、定期的な外部監査や透明性の高い契約・労務管理を実践することが不可欠だ。同時に、Jリーグ自身も改革を迫られている。プロクラブとしてだけでなく、社会的責任を果たす組織としての成熟が問われている。責任を果たせないなら、早急な解体的出直しを検討すべきではないだろうか。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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