日本代表・海外組 日本代表

森保ジャパンが3バックで貫く理由。ブラジル撃破が示した新たな最適解

堂安律 写真:Getty Images

攻撃的ウイングバックが鍵

「戦術カタール」の肝は、守備から攻撃への切り替えだ。そのため森保監督は、堂安律、伊東純也、三笘薫、中村敬斗ら本来はアタッカーの選手をウイングバックに起用している。守りきりたいのであればもっと守備的な選手はいるが、世界レベルの相手に対しても攻撃的な選手の枚数を多くしている。

フルバック(サイドバック)を本職とし守備が得意な選手を置くよりも、爆発的な攻撃のポテンシャルを高めることができる。まるで「爪を隠す」かのように、チーム全体が攻撃力を内に秘めている。「守備は努力である程度は習得できるが、攻撃は天賦の才によるところが大きい」ことから、守備的な選手に攻撃を教えるよりも、攻撃的な選手に守備を教え込む方が効果的だ。

ブラジル戦では、前半こそディフェンスラインに2人余らせて守ったが、後半はウイングバックを一列前に押し上げて主導権を奪った。サイドの背後を突かれるリスクはあったが、それでも3バックを維持したのは、「守から攻」への大転換で主導権を握るための意図的な選択だったといえる。


三笘薫 写真:Getty Images

サイドアタッカーを最大限に生かす構成

現在の日本代表は、サイドアタッカーの層がかつてないほど厚い。三笘、中村、伊東、堂安、久保建英らの破壊力は世界レベルだ。見ているだけでワクワクする。

4バックでは2人のウインガーしか同時に使えないが、3バックならウイングバックとインサイドハーフを合わせて最大4人のサイドアタッカーを同時起用できる。

彼らが内外を自在に動き、縦関係で連動することで、相手守備を引き裂く厚みのある攻撃を展開できる。この点においても、3バックは現在の選手構成に非常にマッチしている。

また、CB陣も進境著しい。渡辺、谷口、鈴木、瀬古歩夢、町田浩樹らは守備面だけでなくビルドアップ能力にも長け、後方から攻撃を組み立てることが可能になった。3バックは単なる守備的な策ではなく、攻撃の第一歩を担う構造へと進化しているのだ。


本大会でも3バックが基本か、それとも“懐刀”4バックか

W杯北中米大会の組み合わせ抽選はまだ行われておらず、対戦国は未定だ(日本時間12月6日予定)。しかし現状を見る限り、森保監督は3センターバックを基本戦術として本大会に臨む可能性が高い。

その一方で、2022年大会同様の4バックを“懐刀”として温存していることも考えられる。相手の戦力や試合展開に応じてシステムを切り替える柔軟性こそ、森保ジャパンの最大の強みだ。

ブラジルを撃破した一戦は、単なる守備的戦術の成功ではなく、攻守の切り替えを前提とした3バックの進化形を証明するものだった。本大会では、その完成形が見られるだろうか。

ページ 2 / 2

名前Takuya Nagata
趣味:世界探訪、社会開発、モノづくり
好きなチーム:空想のチームや新種のスポーツが頭の中を駆け巡る。世界初のコンペティティブな混合フットボールPropulsive Football(PROBALL)を発表。

若干14歳で監督デビュー。ブラジルCFZ do Rioに留学し、日本有数のクラブの一員として欧州遠征。イングランドの大学の選手兼監督やスペインクラブのコーチ等を歴任。アカデミックな本から小説まで執筆するサッカー作家。必殺技は“捨て身”のカニばさみタックルで、ついたあだ名が「ナガタックル」。2010年W杯に向けて前線からのプレスを完成させようとしていた日本代表に対して「守備を厚くすべき」と論陣を張る。南アでフタを開けると岡田ジャパンは本職がMFの本田圭佑をワントップにすげて守りを固める戦術の大転換でベスト16に進出し、予言が的中。

宇宙カルチャー&エンターテインメント『The Space-Timer 0』、アートナレッジハブ『The Minimalist』等を企画。ラグビーもプレーし広くフットボールを比較研究。

筆者記事一覧