
FIFAワールドカップ(W杯)2026欧州予選が進行し、各国が本大会出場を掛けて熱戦を繰り広げている。なかでも注目したいのは、近年ワールドカップの舞台から姿を消している“アズーリ”ことイタリア代表だ。
2大会連続不出場で失墜した名門イタリア代表。その再建を託されたのが、闘志あふれる新監督ジェンナーロ・ガットゥーゾである。現役時代から「勝つためのサッカー」を体現してきた男が、若きアズーリを再びひとつにまとめ、12年ぶりの出場を目指している。
ここでは、W杯2014以降に続いたイタリア代表の苦悩と、新監督ガットゥーゾの下で再び復活を期す“新生アズーリ”について紹介する。

苦難の10年、栄光と挫折の狭間で
2014年のブラジル大会を最後に、イタリア代表は長い低迷期に突入した。2018年ロシア大会の欧州予選では、スウェーデンとのプレーオフで0対1と敗北。イタリアがW杯出場を逃したのは、1958年以来実に60年ぶりだった。
立て直しの兆しが見えたのは、ロベルト・マンチーニが率いたUEFA EURO 2020だ。当時の指揮官は思い切った世代交代に踏み切り、GKジャンルイジ・ドンナルンマ、MFニコロ・バレッラ、FWフェデリコ・キエーザといった新世代を主力へと抜擢。守備偏重だった従来のスタイルを改め、ボールを保持して主導権を握るポゼッション志向のサッカーへと舵を切った。この新たな戦い方は、無敗でのEURO制覇という最高の形で結実した。大会MVPに選ばれたGKドンナルンマを筆頭に、若手の躍動がアズーリ復活の象徴となったのである。
だが、その栄光は長く続かなかった。2022年カタールW杯の欧州予選では、グループCでスイスに勝点2差の2位となり、プレーオフへ回ることに。その後、北マケドニア戦に0対1で敗れ、欧州王者がわずか1年半後にW杯を逃すという前代未聞の事態となった。試合を支配しながらも決定力を欠き、FWチーロ・インモービレやFWロレンツォ・インシーニェら前線の主力が沈黙する結果となった。
問題は単なる不運ではない。セリエAではユベントスの一強時代が続き、国内全体の競争力が低下。欧州カップ戦でも2010年代後半はユベントス以外のクラブが苦戦し、若手の出場機会も限られていた。実際、UEFAチャンピオンズリーグで2017年以降に決勝へ進んだのはユベントス(2017年)とインテル(2023年、2025年)のみ。育成面でも、イングランドやスペインのような体系的なアカデミー制度では遅れを取っていた。
EURO2020では一時的に成功を収めたものの、その後の代表チームは守備と攻撃のバランスを見失い、「自分たちらしさ」を見いだせないまま再び迷走した。この10年間、アズーリは栄光と挫折を繰り返しながら、強豪国であり続けることの難しさを痛感してきたのである。結果が出なくとも理想を追うのか、それとも伝統を守って勝利に徹するのか。現在のイタリア代表は「自分たちらしいサッカーとは何か」を問い直しながら、新たな時代の戦い方を模索している。

魂の再建計画
2022/23シーズンにナポリをスクデットへ導いたルチアーノ・スパレッティが代表監督に就任した際、多くのファンは戦術的な刷新に期待を寄せた。ボール保持を重視するポゼッション型のサッカーは一定の成果を上げ、EURO2024予選も無事に突破した。
しかし、2025年に入るとチームの勢いは下降。選手起用の固定化や得点力不足の解消が進まず、メンタル面でも不安を残した。そんな中、2025年6月に新たに代表監督として招かれたのが、ガットゥーゾである。
元ミランの闘将。現役時代から情熱と闘志の象徴であり、ピッチ上の怒号と献身でチームを鼓舞してきた男だ。監督としてもナポリやバレンシアを率いた経験があり、戦術面より“チームの精神”を再構築する力が高く評価された。
就任会見での彼の言葉は印象的だった。現地メディア『ガゼッタ・デロ・スポルト』によると、彼は次のように語っている。「La squadra ha talento, ma dobbiamo tornare a essere uniti e lottare insieme(チームには才能がある。しかし、再び団結し共に戦わねばならない)」。その言葉からは、技術よりも団結と帰属意識を重んじる姿勢がうかがえる。
スパレッティが築いた戦術の骨格を生かしながら、ガットゥーゾは“闘う集団”としてのイタリアを取り戻そうとしている。戦術の洗練よりも、まずはチームの結束。まさにアズーリの“魂の再建”が始まったのだ。
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