
欧州各リーグが夏のオフシーズンに入り、2025年も欧州クラブの日本ツアーが相次いでいる。レアル・ソシエダ(スペイン)、スタッド・ランス(フランス)、リバプール(イングランド)などが来日予定のこの期間は、日本のサッカーファンにとって欧州強豪クラブの試合を生で観戦できる絶好の機会となっている。
しかし、表面上の華やかさとは裏腹に、観客数や興行収益面での陰りも見え始めている。ここでは、毎年夏の恒例となりつつある欧州クラブの来日ツアーについて、その背景や高額チケット、伸び悩む観客数の問題に迫る。

欧州クラブがアジアツアーを行う理由
欧州クラブがプレシーズンにアジア、特に日本を訪れる背景には明確なマーケティング戦略がある。欧州のシーズンオフを利用し、ブランドの浸透やファン拡大、スポンサー企業との連携を強化するためだ。Jリーグクラブとの対戦は単なる調整試合ではなく、収益を伴うプロモーション活動でもある。
例えば7月30日に横浜F・マリノスと対戦するリバプールは、日本のファッション企業『BAYCREW’S(ベイクルーズ)』と2025年にリテールパートナー契約を締結し、日本国内での公式グッズ展開を強化している。この提携によりファンとの接点が増え、日本市場でのブランド価値もさらに高まっている。
日本での露出強化はスポンサーリターンの一環だが、日本のスタジアムや観光インフラの整備、サッカー文化の定着などもクラブにとって安心材料だ。このように試合を通じたマーケティングはもちろん、商業イベントやグッズ販売、アカデミー展開など複合的な目的がある。

高額チケットと低迷する観客数
華やかな対戦カードが並ぶ一方で、スタンドに空席が目立つ試合も少なくない。その要因の一つが「高額なチケット価格」だ。指定席で2万円超、カテゴリーによっては3万円近い設定の試合もあり、Jリーグに慣れた国内ファンにとっては心理的にも物理的にもハードルが高い。
7月30日に日産スタジアムで開催予定の横浜FM対リバプールの試合では、ほぼ全ての席が1万円以上となっており、高額な席種は10万円を超える。7月27日に行われるモンテディオ山形対スタッド・ランスの試合でも、ゴール裏など一部の座席を除き基本的に1万円以上の価格設定だ。スタッド・ランスは来シーズン2部への降格が決定しており、名門クラブの来日とはいえ2部クラブ同士の試合となるため、価格の割高感は否めない。
また、2023年夏に来日したマンチェスター・シティ(イングランド1部)は、国立競技場での試合にも関わらず空席が目立った。チケット価格は最安で8,000円台、なかには7万円を超えるVIP席もありファン層との価格感覚のギャップが浮き彫りになった。さらに、マンチェスター・シティやバイエルン・ミュンヘン(ドイツ1部)などスター軍団の来日にもかかわらず、公式戦とは異なる“イベント感”に熱心なサッカーファンが冷めた目を向けているのも事実だ。
選手との距離感や出場時間が読めない中、5桁の高額チケットを購入する決断は容易でない。SNS上に「スター選手が来るのは嬉しいが、価格が現実的ではない」「親子で行ったら交通費も含めて5万円以上になる」といった声が挙がるのも当然だろう。
さらに近年では、主力選手が帯同してもプレー時間が限定的であったり、直前で欠場するケースも増えている。これまでも一部の欧州クラブが若手主体で臨み、観客の期待を裏切ったとする声もある。憧れのスター選手がピッチに立たない可能性が観戦をためらわせる大きな要因となっているのは明らかだ。
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